朝10時過ぎ、NTTの人が来た。
交換機のプラグたどうたらこうたら言っていたが、無事使えるようになった。
あとはネット接続ができるのを待つのみ。
パンを食べ、洗濯をして布団を干す。
昼の1時少し前に、電気工事業者がきた。
二人組だった。
一人は小柄な若い女性。
もう一人は太ったインド人ふう。
インド人の方が技師で、女性は助手といった感じだった。
インド人は配電盤をあけ、
「けっこう散らかってますね。これを整理して、40Aひいてもらって、コンセントの形状を変える感じですね」
と言った。
「では、見積り出してから連絡しますんでね。これ名刺です」
名はアリさんといった。
「それでは失礼します」
アリの声と女性の笑顔が閉まるドアの向こうに消え、謎だけが残った。
会社は、チーム・アリというらしい。
つまり社長だ。
小柄な日本人女性は、そこで働く助手だろうか?
それともアリの奥さんだろうか?
気になる。
いっそチーム・アリに入りたい。
もしそうなったら、今後芝居をやる時、チラシなどには、
塚本健一(チーム・アリ)
になるのだろうか。
4時くらいまで部屋の片付けをする。
文庫本を本棚に入れ、ダンボールをたたむ。
順番はぐちゃぐちゃだ。
しかし、よくもまあこんなに買ったもんだと思う。
読んできたことより、使った金の方に頭がいく。
いくら使ってきたんだろう。
図書館で借りていれば、数万円浮いたんじゃないだろうか。
4時過ぎに区役所の荻窪事務所へ行き、転入手続きを済ませる。
国民健康保険証をもらう。
財布に入るカードサイズだった。
そのまま丸の内線に乗り、浅草へ。
仲見世からアーケードに少し入ったところにあるという店で親子丼を食べ、水上バス発着所近くの広場へ行く。
そこではお祭りをやっていて、隅田川に面した小さいステージが組まれていた。
7時から知久寿焼ライブが始まった。
神谷バーの屋台で買った電気ブランをちびちび飲みながら聴く。
夜風は心地よく、左手には川が流れ、夜店の明かりは幻想的にきらめいていた。
そんな中で聴く知久寿焼の声は魔法のように響き、この世のものとは思えなかった。
一曲終えるたびに知久さんはビールをぐいっとあおる。
客も皆、飲み物を手にしていた。
小学生くらいの子供は最前列でステージを見上げ、うんうんとうなずくようにメロディに合わせていた。
ステージ正面から3メートルほどの地面には若い兄ちゃんがいて、鞄を枕にして仰向けに寝転がって聞いていた。
皆、思い思いの態度で体勢でそこにいた。
ライブは8時にいったん終了。
その後仲見世あたりをちょっと歩いて、また公園に戻る。
ライブの2部が始まっていた。
客は1部より増えていた。
知久さんは声がかすれていたが、相変わらずビールをぐいぐい飲んでいた。
隅田川の向かいにある高層ビルに音が反響していた。
こんなの、本当にタダで見られていいのだろうか?
9時過ぎに公園を後にする。
頭の中がじんじんと痺れていた。
この体験はちょっと、筆舌に尽くしがたい。
10時過ぎ帰宅。
電熱線コンロを押入れから出し、お湯を沸かしてカップラーメンを食べた。
シャワーを浴び、CDTVを見る。
2時過ぎ就寝。