ゆっくり歩く道

ヴォネガット『チャンピオンたちの朝食』読了。
ずいぶん時間がかかった。

悲観的に語られる喜劇と、楽観的に語られる悲劇が、ヴォネガットの真骨頂であると思う。
この作品は珍しく、悲劇が楽観的に語られていない。
現実に対する諦観した態度があり、ニヒリズムを感じさせる。

夕方実家へ。
冷蔵庫をのぞいたが、食べ物が何もなかったので、近所のスーパーへ行き食パンとハムとレタスとトマトを買った。
九分九厘サンドイッチを作るつもりだったが、ラーメンを食べて帰った。

マグ主演女優のつるまみが、七夕の日に入籍したとmixiで知った。
2月の時点で今年中にするつもりだと聞いていたが、七夕の日を選ぶとは粋なものだ。
役所にはゆっくり歩いて行ったという。
手をつないだり離したり、しゃべったり黙ったり、うなずいたり笑ったりしながら歩いたのだろうか。
いい話だ。
雨が降らなくて良かった。
涼しく心地よい風が吹いていて良かった。
何十年か経ち、この道をゆっくり歩いたのよと、子供らに話しながら歩く日が来ることを祈る。

夜、父親と海の話をする。
子供の頃、父の会社が所有している別荘が、千葉の岩井にあった。
トイレも風呂も古く、入るのが嫌だったのを覚えている。
「あの家はいつからあったんだ?」
「…俺が会社に入った頃にはもうあったからなあ…買った時点で古い物件って言ってたらしいぞ」
「ということは昭和30年代か」
「だな」
「築50年か」
「先代の社長が死んで、人手に渡ってるよ」
「俺が学生の時に、偶然あの別荘の真向かいある民宿で合宿をしたことがあったよ」
「どうだった?」
「真っ暗で誰も泊まってなかった」
「…トイレを改築したって聞いたんだけどな」
「トイレで住む問題じゃないよあれは。風呂も食堂もみんなリフォームしないと、誰も泊まりたがらないよ」
「そんなにひどかったか?」
「そりゃ、4歳くらいの頃は平気だったけど、小学生に上がるともうダメだったね。風呂場にフナムシが出たしさ」
「でも、シャワーがあったろ?」
「あったけど、水が出るところがたまたまシャワー状になっているってだけだよ。『映像の世紀』で見たナチスの強制収容所そっくりのシャワー室」
「バブルがはじけたからなあ。あの辺なんか二束三文だろう」
「でも岩井は人気あるからね。7月8月だけは優良物件だよ。海まで歩いて7分で行けるし。近くの畑からブドウ盗めるし」