朝11時に家を出る。
東小金井で下車。
「宝華」に入り、迷ったあげく、結局「チャーシュー宝そばセット」を頼む。
ネギチャーシュー丼はとてもうまい。
再びJRに乗り八王子へ。
北口に降り、ファミレスを探しながら歩くが、見知らぬ街でいざ探すとなると、なかなか見つからない現実に直面する。
路上でPCの電源を入れ、Googleマップで調べる。
駅前にサイゼリアがあるとわかった。
そこに向かう。
エレベーターで上の階に上る。
サイゼリアは混んでいた。
さんざん待って、ドリンクバーだけ頼んで、資料読み作業を延々するのは気が引けた。
「じゃあいいです」
あっさり言ってエレベーターを降りる。
ファーストキッチンがあったので、そこに入る。
コーヒーだけ頼んで、席に座って本のページをめくり始めたが、小さい子供がロバート・プラントばりのハイトーンボーカルで、泣き声を店中に響かせていたので、これはたまらんと思い40分ほどで店を出る。
時間を無駄にしていると感じ、そのことがイライラ感をかき立てる。
夜7時に鶴マミの芝居を見るために八王子に来たのだ。
だがその前に台本を書こうと思って早めに来たのだ。
すでに時刻は3時を過ぎていた。
20号沿いにデニーズを見つけた。
そこは適度に空いており、ロバート・プラント的ハイトーンヴォイスの子供もいなかった。
コーヒーとサラダを頼み、資料読みをする。
二澤雅喜『洗脳体験』
福本博文『そして催眠セミナーへ』
上田紀行『癒しの時代をひらく』
久保博司『人は、変われる』
一気に読了。
目がチカチカした。
6時過ぎに店を出る。
デニーズから歩いてすぐのところに、市の施設っぽいホールがあった。
受付を済ませ、ロビーに座っていると、一石君と会った。
世間話をするうちに開場時間となる。
自由席だと思って適当に座っていたのだが、指定席と途中でわかり、慌てて席を探すと一つ前が自分の席だった。
背もたれを一またぎで済んだ。
開場時間中、鈍い音を立てて転ぶお客さんがいた。
近くの女性が近寄り、ハンカチを出し、
「係の人を呼んでください」
と言った。
頭から血を出しているようだった。
その女性は、やってきた受付の人に、救急車を呼んだ方がいいなどの指示を出していた。
看護士さんなのだろうか。
しっかりした人だった。
その女性が自分の左の席に座った。
少しどぎまぎした。
『足長おじさん』の芝居だった。
歌のパートと芝居のパートに分かれていた。
テーマ曲を歌う女性の歌がとてもうまく、聞き惚れてしまった。
主人公の少女は足長おじさんの援助でお嬢様学校に通う。
そこの、ライバルのお嬢さんを、鶴マミは演じていた。
大変いい役をもらっているなあと思った。
「キャンディ・キャンディ」のイライザみたいな性悪女にならずにやれたのは、演出ゆえか鶴マミの性質ゆえかわからないが、コメディ・リリーフの役割も果たしており、悪印象はもたれなかったと思う。
声のトーンの、一番高い時と低い時の差が、今よりも大きければ、主役を食えたかもしれないと思う。
終演後、鶴マミに挨拶。
いい役もらったねと伝える。
ロビーで山下さんと会う。
今回の鶴マミ出演は、山下さんの尽力があったのだろう。
帰ろうと思ってホールの出口に行くと、外は大雨だった。
地面に恨みのある雨粒が、恨みを晴らしまくっているような大雨だった。
ホールのひさしに隠れ、雨脚の弱まるのを待つ。
天気情報をネットで見たりする。
八王子は曇りとなっていた。
(情報操作か?)
と思う。
待っていてもらちがあかないと判断し、ほんの気持ち、雨が弱まったかなという隙を突いて、建物から建物へ忍者移動し、近くの100円ショップに飛び込む。
ビニール傘を買い、駅まで歩く。
途中、部活帰りの女子中学生達に遭遇する。
一人だけ、傘を差さずに先頭を歩いており、
「ぜってー風邪ひくよ」
と背後から言われていた。
雨に濡れっぱなしで帰りたい気分だったのか。
いいぞいいぞ。
帰ってママに叱られながら風呂に入り、さっぱりするといいよ。
そういう気分は、おじさまもわかるのだよ。
昼飯を食べてからだいぶ経っており、かなり腹が減っていた。
駅近くの『一平』というラーメン屋があいていたので飛び込む。
昭和のオーラに包まれる。
ドキドキしながら五目そばを頼む。
ひどい味だったら落ち込むところだ。
出てきた五目そばは、普通に美味しかった。
ほっとして会計をし、店を出る。
東京行きの各駅に乗る。
武蔵小金井を過ぎたあたりでも雨の勢いは収まらなかった。
ところが西荻窪を過ぎ、荻窪に着くと、驚くことに地面は乾いていた。
多摩限定の大雨だったのだろう。
人生楽ありゃ苦もあるさと、鼻歌交じり気分で、のうのうと歩いて帰宅。
八王子は遠い。
役者さんは、打ち上げなど、どうしているのだろうと思った。
家で神経を緩めていると、窓の外から雨の音が聞こえ始めた。
八王子で地面への恨みを晴らしていた、あの雨粒達だ。
ドラムロールのような音が聞こえてきたので、窓を閉めた。
まだ部屋は涼しくはない。
だが暑くもない。
夏が秋に変わりかけている、微妙な瞬間。