それぞれ悪いところがある

7時過ぎ起き。朝食を食べていると、父からナポレオンについて色々質問される。知っていることを答える。エジプト遠征、ジャコバン派、皇帝選挙、ロシア遠征、エルバ島、ワーテルロー、セントヘレナ。
母が時々、関係のないことを質問してくる。耳が遠いため、大きい声を出さないといけないが、そういう声では話せないことは沢山ある。ナポレオンのこともそう。「ジャコバン派が権力を握っていた時に…」「ごはん?」「ご飯じゃない。ジャコバン派」「なにご飯?」「だから、ジャコバン派!」「そうそう、ご飯と言えばね…」話が飛ぶ。
「オレは今、ナポレオンの話をしておったのだよ」父が言う。「聞こえないのに話に割り込んでくるんじゃないよ」
「あんた、滑舌悪いから、全然聞こえないのよ」母は言う。
父は箸を止め「オレ、滑舌悪いか?」と聞いてくる。納豆を混ぜながら首を振る。「それみろ」父は勝ち誇ったように言う。母は不満そうに「そうかしら」と言う。「お前はね」父が言う。「自分が補聴器つけないと聞こえないのに、人のせいにするから、話す気なくなるんだよ」

補聴器を母は持っているが、家ではほとんど使ったことがない。腕の良い職人が病気になり、手先が利かなくなっても、まだ現役と信じて工具を振るうように、母も自分の耳について、現役と信じたがっている。母は聞き上手で話し上手だった。

家族四人それぞれ悪いところがある。父は目が悪い。片方の視野がかなり狭い。妹は口が悪い。「母さんと話すと大きい声出さなきゃいけないから疲れる」母はそう言われてショックを受けたそうだ。
俺は性格が悪い。

8時過ぎに家を出る。

スマホの通信量がなぜ増えたのかを調べた。ニュースアプリが原因だった。開くと動画が再生される設定になっていた。Wi-Fi接続時だけに変更する。ばかやろう。

淡々と仕事をし、息抜きにワクワクする瞬間を想像する。思いついたのは、ハゼ釣りの時の竿の当たりだった。命を捕らえた振動。

昼、代々木のポパイで、生姜焼きとアジフライセットを食べる。950円もした。三点盛りセットの方が安くて品数がある。なぜ生姜焼きの方を頼んだのか自分でもわからない。腹八分目になったので結果的には良かったが。

午後、マトリックス表を少し直す。見た目重視なので、Excelのフィルタ機能が使い物にならない。地味な作業だった。質問できる人もおらず、うんざりしてきた。

定時に上がる。方南町へ。ビバホームに寄り、ブルーシート、棚板、L字金具、短いLANケーブルを買った。園芸コーナーにトマトの苗が売られていた。荷物が多かったので買うのは明日にしようと思った。

7時半帰宅。クラッカーにアボカドディップをつけて食べる。鏡を見ると目の下に隈ができていた。仕事の疲労によるものだろう。棚板取り付けもLANケーブル交換もする気力がわかなかった。9時半就寝。