左卜全の伝記を読んだ

8時起き。朝飯に、トースト、ソーセージ、目玉焼き、コーンスープ。

9時半から12時まで一気に作業。コードを修正し、同時にテストもその都度していく。

昼飯にあさりご飯、冷凍唐揚げ、キムチなど、家のありもの。

午後、コード修正と、改修点の最終報告をする。今日中に終わらせることはできなかったが、週明けには仕上がりそうだ。

今回改修しているツールは、昨年の秋と今年に、ほんの少ししかいじっていないものだったので、コードも古いままで整理されていなかった。今回の依頼がきてからじっくり見たおかげで、大分中身もわかったし、コード整理も進めたので、次回何かの依頼が来たら、より一層効率的に対応出来るだろう。

じっくり見た、と書くと、まじめに日々中身を見ていたかのようだが、実際はほとんど見ていない。依頼内容だけ頭の中に置いて、面倒くさいなあとか、やる気がでないなあとか言いながら、周囲を徘徊していただけだ。

にも関わらず、そういう時間を過ごしている間に、脳みそのバックグラウンドで実行されているプログラムは、改修にあたってどのように進めればいいか、どこを見ればいいか、どんな質問をすればいいかなどを、考えてくれていたようだ。

昔はやった言葉でいえば『潜在意識』である。その言葉を用いるとうさん臭くなるが、昨日と今日作業をやって、潜在意識が進めていた仕事を引き継いだという感覚は確かにあった。

『椿三十郎』で、潜んでいる三十郎が、駆けずり回る若侍達とは裏腹に、寝転がってばかりいる場面を思い出した。なかなか、ああはなれないが、若侍にならないでいることは、努力すればできる。

しかし、三十郎でもないのに寝転がってばかりだと、ただの役立たずではないか? やはり、寝転がっていつつも、気配は感じようとしなくてはいけないだろう。なんの気配かわからないが。

夜、ポテトフライ、ソーセージ、ザワークラウト、冷凍焼売を食べ、パーフェクトサントリービールを飲む。

三ヶ島糸『奇人でけっこう』読了。

左卜全夫人が書いた、夫の伝記である。図書館で借りた。

保存庫にあったものらしく、古めかしい貸しカードが裏表紙に貼り付けられていた。スタンプで押された貸出日のもっとも新しい日付は昭和57年のものだった。もっとも、図書館のシステムが、スタンプを押して貸出日を管理する方式ではなくなってからも、誰かが借りることはあっただろうから、オレが42年ぶりに借りたというわけではないたろう。それでも、今週、日本でこの本を読んでいた人は、オレくらいしかいなかったのではないか。

左卜全は、1950年代から60年代にかけて多くの日本映画に出演した俳優だ。黒澤映画によく出ている。有名なところでは『七人の侍』で、侍を雇うため町に出てきた百姓の与平を演じている。持ってきた米を盗まれ、「米盗まれた…」とつぶやく場面の、あの人である。

他に大きな役で『どん底』の巡礼がある。大家を演じる中村鴈治郎と対峙して、「おめえさんの足元はどうだね?」と聞くシーンなど、ゾクゾクした。

オレが左卜全を見たのはもっぱら黒澤作品で、特に『どん底』は、卜全や三井弘次や渡辺篤を楽しむために、過去三十回くらいは見た。

左卜全は奇人伝説ばかり残っており、オレもそれを信じてきたが、本書を読んでそのイメージは180度変わった。

外に見せる自分は虚で、内のみが真実であり、妻に対しては、内において大変厳格であった。しかし妻は、夫がこれまでどれだけの苦しみを嘗めてきたか、そして、夫の欠点やほんとうの美質は何であるかを理解しており、それゆえに、夫に尽くすということは、苦でもなんでもなかった。

今の時代、共感を得られることはほとんどないと思われる内容であったが、明治生まれの夫婦であるし、その時代に育った人の感覚だから、これは仕方ない。

卜全は友達が一人もいなかった。これもすごい。しかし黒澤監督は「難しい役だから左さんにお願いしたのです」と、その力量を見抜いていたし、森繁さんも、どうやら卜全に興味を示して、色々質問してきたらしい。本の題字も森繁さんだった。人間に興味を持つ森繁さんらしい。

脱疽という病を得、激痛から逃れるには足を切断するしかないのに、切断はせず痛みに耐えて松葉杖をついていたエピソードは、凄みを感じた。他に、三十代に『先生』という宗教家に師事して、十年間ギャラのすべてを渡し続け、自分は小遣い50銭だけもらって暮らしていたエピソードもあった。ただ騙されていたというわけではなく、先生はひどいが教えは尊いという理屈で、その苦しみに耐えていたのだ。

なぜそこまてして? と思ったが、その積み重ねがあっての演技と、世間に対する奇人のフリであるから、簡単に理解できるような人ではない。それが、よくわかった。

明日から連休なので、青春18きっぷを使ってどこかへ行くつもりでいたのだが、宮崎や神奈川の地震もある中で、行くところガ決まっているわけでもないのに、繁忙期にわざわざ行くのは変だと、突然悟った。で、行かないことにした。

11時頃、自転車で高円寺方面へ。飲みの〆的なラーメンが食べたかった。環七に出て野方ホープの前を通り、そのまま野方駅のアンダーパスを抜け、ホープ軒でラーメンを食べた。

12時帰宅。外が熱帯夜ではなかったので、エアコンを消し、そのまま就寝。