二年越しのお参り

4時40分起き。身支度をして5時前にチェックアウトする。

徳島駅へ。改札は自動ではなかったので、青春18きっぷを駅員に見せてホーム内に入った。そして、青春18きっぷが自動改札対応になった場合、日付を連続して使用するしかないのだということもわかった。今までのように改札を通ったことを証明するスタンプがないから、徳島駅のように自動改札がない駅の場合、駅員は、きっぷの連続した日を見て、今日がその日に当てはまっているのかを確認するしかないわけだ。

だが、それならば購入時に、日付をバラで指定できるようにしてくれると有り難い。きっぷの端にそれらの日付を印刷すれば、自動改札でなくても、駅員は、その日がきっぷを使える日かどうかがわかるだろう。

とにかく、連続でないと使用できないのが不便すぎる。三日間チケットならともかく、五日間チケットの連続使用など、さすがに需要はないだろう。今までの五日間仕様は、バラで使えたからこそ売れていたのだ。

列車は高松方面へ。電車ではなくディーゼル車だった。徳島県のJR線はオール非電化でもあるらしい。

塩野七生『小説イタリア・ルネサンス』1巻を昨日読み終えた。16世紀前半、ヴェネツィア共和国の青年貴族マルコが、スレイマン大帝のオスマン帝国など大国との外交を武器に、ヴェネツィア共和国の政治家として成長していく、ミステリー仕立ての青春物語。同時に、当時の地中海世界における、スペイン、フランス、オスマン帝国の三國志を、小国ヴェネツィア視点で描いた歴史小説でもあった。

歴史小説の部分は猛烈に面白かった。そもそもヴェネツィア共和国を世界史視点でしっかりと調べたことがなかったので、なにもかもが新鮮だった。

続きの2巻を車中で読み始める。

7時過ぎ、徳島駅手前の栗林で降りる。地図を見て勝手に田舎風の駅だと思いこんでいたら、その地域はすでに高松の市街地に含まれており、駅は高架だった。

歩いて、『うどんバカ一代』に向かう。8時前の時間帯で、高松駅の近くにあってあいているうどん屋はそこくらいだった。車だったら他に選択肢があったかもしれない。

店の前には行列ができていた。ある程度並んでいることは覚悟していたが、店だけでなくその区画を囲むように人が並んでいたのには絶句した。ちょっとやそっとの待ち時間で順番が来るような人数ではなかった。

並ぶのを速攻で諦め、LUUPで高松駅に移動した。

コンビニでおにぎりを二つ買い、岡山行きの電車に乗った。混んでいた。ボックス席の四人席に、大きなキャリーケースを抱えた男性が一人で座っていたので、会釈して斜め前に座った。

岡山で播州赤穂行きに乗り換える。岡山駅も混んでいた。乗り換える前にホームの端でおにぎりを食べた。

播州赤穂で姫路行きに乗り換え、姫路で新快速の近江塩津行きに乗り換える。

12時半前に大阪へ。環状線で天満に移動し、天神橋筋三丁目商店街のお好み焼き屋『双月』へ。一昨年の夏に来たときは昼間お休みだったが、今日はやっていた。二組ほど並んでいた。後ろに並ぶ。15分ほどで順番がきた。

いかにく玉の大盛りを頼んだ。焼きそばも頼もうか迷ったが、ここで腹を一杯にしなくてもいいと思った。大阪なのだし、物足りなければ、他の店で何か食べればいい。

いかにく玉はインド系の店員さんが焼いてくれた。肉を先に鉄板で焼き、その間具をよく混ぜて、肉の隣に広げ、お好み焼きの型を丸く作ったら、隣の肉をお好み焼きの上にのせる。

店員はいったん去り、少ししてからひっくり返しに戻ってきた。ひっくり返したあと再び去り、また数分後に戻ってきて、もう一度ひっくり返し、それから間もなく、鉄板の火を止め、壁に貼ってある食べ方を参考にして下さいといって去っていった。

最初にマヨネーズを全体に塗り、その上にソースを塗り、削り節と青のりをかけた。以前来たのは15年も前で、淀川市民マラソンを走ったあとだった。お好み焼きは自分で焼いて食べた。焼きそばは店員さんがきて焼いてくれた。

お好み焼きは美味かった。自分で作っても絶対こういう感じにはならない。

しかし、自分でよく作るようになったからこそ、気がついたこともある。キャベツの量が意外なほど多くないということだ。そのため、出来たお好み焼きの食感は生地部分に負うところが多かった。膨らし甲斐のある配分にできたということかもしれない。自分で焼く時はキャベツの割合を高くするので、食感はそのサクサク感が前面に出ている。それはそれで好きだが、『双月』のよう、自分で焼いてもふっくら仕上がって美味しくなるお好み焼きは、やはりプロの配合したお好み焼きなのだろう。

大盛りは、生地に混ぜる卵が一つ追加されているという意味だった。それなら、別に追加しなくてもよかった。15年前の値段がいくらだったかは覚えていないが、当然、かなり値上げはしているのだろう。食べ終わり、会計をした時に、ひょっとするとぶた玉と焼きそばとビールを頼んだ15年前とそんなに変わらない値段かもしれないなあと思った。

西に歩き、高速の下をくぐり、堀川戎神社の裏手で自転車を借りた。松屋町筋をひたすら南下して、天王寺の一心寺に向かった。信号で止まった時にスマホで現在位置を確認したが、天満から天王寺までは6キロくらいあり、結構遠かった。

3時過ぎに天王寺動物園のステーションで自転車を返却し、一心寺へ。線香を買い、納骨堂でお参りをした。8年前に亡くなった田和くんは、一心寺にいる。一つの墓にぽつんと納められているのではなく、色々な人と一緒に入って、毎日色々な人に線香をあげてもらうのだから、寂しくはないだろう。「とりえあず、やっと来たよ」とだけ心の中で念じ、線香を手向けた。線香は仏様の食事になるというが、そういう意味でも、毎日たらふく食べていることだろう。太ってないか? それが心配だ。

天王寺駅まで歩く。一昨年来たときは一心寺の入口で局地的集中豪雨の雲が近づいたので、急いで天王寺駅近くのアーケード商店街まで走った。ひさしの下に駆け込んですぐ、激しい雷雨となったのだ。

天王寺から環状線で大阪へ。新快速の舞鶴行きに乗り換える。

昨日、東京を出た時から、どこに行ってもずっと曇っていた。九州では大雨になっているらしい。先週7日以来、猛暑が落ち着いて、梅雨入り前みたいな天候になっている。

『小説イタリア・ルネサンス』2巻読む。舞台はフィレンツェ。治めているのはスペイン皇帝カルロスの傀儡であるアレッサンドロ公爵。彼のそばに付き従っているロレンツィーノは、メディチ家の血を引き、後継者候補でもあるのに、アレッサンドロに女を提供するのを仕事にしている。主役のマルコは前巻でしばらく政治の世界から干され、フィレンツェには旅行者の立場でやってきた。泊まった宿の主人ジョバンニが冤罪で逮捕され、そこでロレンツィーノの知遇を得る。フィレンツェにはヴェットーリという還暦の老貴族がいる。マキアベリの親友で、これぞ貴族という立ち振る舞いがかっこいい。

後半、ロレンツィーノとジョバンニの関係が明らかになるところで、がぜん面白くなり、ページをめくる手を遅くした。ささっと読み終えるのがもったいなかった。

5時半頃に敦賀に着いた。雨が降っていた。傘をどこかで買おうと思い、地図を調べると、駅から宿に向かう途中にショッピングモールがあり、ダイソーが入っていた。

駅を降りて、ダイソーに向かった。ショッピングモールの3階にあった。300円の傘を買った。2階に降りると、メンズの服が売られていた。ハーフパンツが割引されており、黒いのがいい感じだったので買った。

宿にチェックインする前に、夕食を『ヨーロッパ軒』という洋食屋で食べるつもりだったので、店に向かった。店に着くと、順番待ちの客がかなりいた。順番待ちの紙に名前を書き、先に宿でチェックインした方がいいと判断した。

店から宿へは歩いて5分ほどで着いた。部屋に余分な荷物を置き、財布とスマホと着替えとタオルを持って、再び店に向かった。店に着いて、予約待ちの紙を見ると、自分の一人あとの名前にチェックが入っていた。「お客さん、どちらさまですか?」と、店の人に言われたので、名乗ると、「どうぞこちらへ」とカウンターに案内された。順番が来るのは意外と早かったようだ。

カツ丼を頼んだ。ここのカツ丼はソースカツ丼で、店の名物らしい。

薄めのカツをサクッと揚げており、ご飯にもソースが染みて美味しかった。

6時40分頃に店を出て、銭湯に向かう。敦賀には銭湯が2軒あった。そのうち、星が少ない方に向かった。昨年改装されたらしく、星が少ない理由は改装前の昭和まる出し銭湯設備時の星によるものと思ったからだ。

銭湯に向かう前に、散歩がてら、先ほど傘を買ったショッピングモール方面まで歩いた。駅に近くなると、アーケードがついており、雨をしのいで歩けるようになっていた。途中、若者が数名歩道に集まっていた。一人が電話で誰かと話していた。若者達のそばに車が止まっていて、フロント部分が凹んでいた。どうやら、アーケードの柱に激突してしまったようだ。電話は、レッカー移動の交渉みたいだった。

雨は降ったりやんだりしていたが、西の空に雲の切れ目が出来、夕焼けができていた。また、屋台のラーメンが軒を連ねる通りがあった。営業していたのは一軒だけだった。

あちこちに、松本零士作品にまつわるモニュメントがあった。

目的の銭湯に着く頃にはすっかり暗くなっていた。

サウナもある銭湯だったが、普通料金で入った。洗髪し身体を洗い、湯船につかり、水風呂に入った。水風呂は階段を上って入るもので、大人の身長くらいの深さがあった。立つと、水面がちょうど首のところまできた。

銭湯を出る時、番台のおばあちゃんに挨拶された。いい銭湯だった。

ファミリーマートに寄って缶サワーを買い、宿に戻って飲む。時々、他の宿泊者が話す声がかすかに聞こえた。何をするにも眠いという感じになってきた。時刻は10時だった。

目覚ましを朝の4時半にセットして就寝。