次回公演『ジャック』のこと。
昨年10月末にタイトルがまず決まった。
珍しいことだ。
ハイジャックの芝居を書けないかとまず考えた。
次にその芝居を上演している劇場がジャックされたらどうなるだろうと考えた。
この入れ子構造を下敷きに一本書けば面白いだろうと思い、年末から年始にかけて案をつめた。
だが、面白くなりそうになかった。
芝居は面白い。
笑いがふんだんに盛り込まれ、わかりやすく、みんなが楽しめる作品になるなあと思う。
それでもこの作品は、誰かをどこかへ連れていくことはできないだろうなあと思った。
先が読めてつまらなくなってしまったとも言える。
自分なんかに先を読まれるような芝居は見たくないし、まして書きたくない。
それで、ハイジャックの芝居という案は却下した。
だがタイトルの『ジャック』は残した。
ハイジャック。
移動手段をのっとり、目的地を変更させ、金を要求する。
目的地を変更させるというところが、どうも引っかかる。
そこへ行けばどうにかなると、犯人は信じているのだろうか。
だそこへ行けばどうにかなるという、そんなとこはどこにもない。
行けばそこは常に、ありふれたとこだ。
だが、そこへ行きたいという思いは人を動かし、心を揺さぶる。
ハイジャックが普通の強盗と違うのは、そこへ行きたいという思いがあることだろう。
だからといって理想化していいものでもない。
楽しいだけの芝居にしていたら、はき違えていたかもしれない。
夕方、雨が降っていた。
荻窪の『トマト』でビーフカレーを食べる。
ソースはスパイスの饗宴だった。
肉も軟らかく旨い。
8時過ぎ帰宅。
寒かった。
『俳優の仕事』あと少しで読み終わりそうだ。