高橋尚子

 長嶋が監督を辞任した。
 高橋尚子がフィクション以上のエンディングを自ら演じた。
 イチローがさりげなくメジャー記録を更新した。
 古い世代は下手へと去り、新しい世代はいよいよ見せ場が待っているといった感じだ。
 それにしても、高橋尚子はちょっと凄すぎる。
 アレがもし、映画のシナリオだったら、「うーん、ラストの展開がちょっとね」とか言われてるはずだ。
 「現実」に侵食される「虚構」
 さきのテロ事件もその一つだ。

 夕方、稽古場にて。
 板垣さんが話しかけてきた。
 「塚くん、あのさ、キンタマにぎらしてくんない?」
 「はあ?」
 「あの、殺陣のところでさ、スローモーションで握りつぶすっていう動きを考えたの」
 「なるほど」
 「塚くんのはどっち寄り?」
 「そうですね、僕のは…って、客観的に見たことないからわかりませんよ」
 「いや、一応、ない方を握りつぶそうかと思ってさ」
 「わかりました。今夜、調べておきます」
 「いいよそこまでしなくて」
 板垣さんは次に東さんの所へ行った。
 「東さん、あのね、キンタマにぎっていい?」
 「はあ?」
 「もう、東さんしかいないの」
 「あっそ、じゃ、いいよ」
 「良かった。昼にそのアイディア思いついてさ、ずっとどうやってにぎろうか考えてたんだ」