内外の弁慶

 午前中、そして午後。
 夕方になっても眠かった。
 まるで偏頭痛がそのまま眠気になったみたいに、それは一日中ついてまわってきた。
 カフェインで「あっちへ行ってくれない」ことが昨日判明し、奴らに対してもはや裸同然だ。

 やっかいなのは仕事などをしている時にそいつはやってくることだ。
 あと、稽古の肝心な時とか。

 そして、いざ布団を目の前にすると眠れないのだ。
 馬鹿にしやがって。

 調べ物をしたり考えたりすることが多く、緊張と弛緩のリズムが狂ってしまい、いわゆるひとつの自律神経がくたびれたのかもしれない。
 分析終了。
 で、どうすんだ?

 稽古にて。
 阿部さんに、人を傷つける時の心理を色々と説明する。
 何気なく質問した。
 「たとえば、弟をせっかんする時はどこを狙うの?」
 「腕を狙います」
 あざになるくらい、だそうな。

 健ちゃんと阿部さんで、胃が重くなるほどのエチュードをしてもらい、その後1場の稽古。
 それから望月と阿部さんでエチュード。
 「望月は妹と喧嘩したことないの?」
 「…全然ない」
 「うそ」
 「いやほんとに。全然しないですよ」
 彼は外で憎まれ口を聞く反面、家では決して喧嘩をしないのだそうな。
 「それは逆・内弁慶かい」
 「外弁慶でしょう」
 「なるほど。でもどうして外ではそんな自分を出さないの?」
 「うーん、恥ずかしいですよ」
 「恥ずかしい?」
 「恥ずかしい」
 「むしろ、それを恥ずかしいと思う自分がそこにいる、って感じじゃないの?」
 「そう、ですねえ」
 こういう質問はあまりされないらしい。