真夜中の8キロ歩き

 朝からどうも喉の調子が良くなかった。
 外は雨が降っている。
 昼過ぎに渋谷へ出かけたが、雨はしつこくしつこく降り続けていた。

 夕方、南中野で稽古。
 稽古前になぜか「演劇論」みたいな話をする。
 特に深い理由もなしに話を始めたのは、生のままに演出を受けている下剋上の女の子達に、老婆心に似た気持ちが沸き起こってきたためだ。
 台本をもとに稽古をする以外に、演技論みたいなものを話してみたいと思ったのだ。

 論を事始にするのは良くないと思いつつ、やはり物事の取っ掛かりとしてそういうものは必要だと思う。
 世に「演技論」「演劇論」の類はたくさんあるが、論に縛られないためにそれらは読んでおくに越したことはない。
 なるべく広く浅く。
 どんな形をも受け入れられる度量が育つように注意深く。

 話をしながら自分の演劇観をフィードバックすることができた。
 そして根っこにある演劇観がわりとオーソドックスなものであることに気づいた。
 気づいたからにはその考えに縛られないよう努力しなければならない。
 注意すべきは否定する心。
 こうあるべきだと他人を枠に押し付ける慢心。

 後半の稽古をした。
 ドラマが収まるべきところに収まる部分なので、後半だけを抜き出して稽古してもあまり意味がない。
 むしろそこに至るプロセスを重点的につくって、後半は自然に流すべきだろう。
 細かい演出をつけようと思えばきりがない。
 淡々と「お菓子稽古」などをした。

 夜、八王子から横浜線上り電車に乗るが、町田より先に行けなかった。
 仕方ないので町田から8キロ歩く。
 東名高速の横浜町田インターあたりを歩いていたら、物の怪の気配がして恐ろしかった。

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