仕込み初日

 仕込み初日に心苦しくも仕事をした。
 夕方新高円寺駅から歩いて劇場に向かう。
 高円寺は商店街の町だ。
 南口も北口も長い商店街がある。
 両方合わせると結構な距離になるんじゃないか。
 商店街はいい。
 ショッピングモールと違って、いくら長くてもいいのだから。
 端と端が5キロ離れた商店街なんて、とてもすてきだと思う。それだけ離れていれば同業種でもやっていけるだろう。
 というかそんな商店街はないか。

 6時半明石スタジオ入り。
 99年の3月、阿佐ヶ谷南南京小僧旗揚げ時に音響で入って以来かもしれない。
 あの時は金はないし風邪はひくしで散々だった。
 今回はそう言うことのないようにと、神棚に御賽銭をそなえて柏手をうつ。

 舞台は照明さんがシュートにつかい、音響さんもサウンドチェックなどをやっている状態だったので、仕込み作業はやることがそれほどなかった。
 「手伝うことある?」
 と、誰に聞いても、
 「今は特に」
 との返事だった。
 まるでサラリーマン社会におけるリストラの前奏曲だなと自嘲しつつ、せっかく目の前に時間が転がっているのだからと台本を初めから総ざらいしてみた。
 基本に帰ることで取り戻せる落ち着きというのもあるのだ。
 あるのか?
 あるはずだ。
 あって欲しい。

 9時解散。
 衣装の靴下を探すが見つからず。
 10時半帰宅。
 やり残したもろもろの雑事やらをこなすうちにあっという間に2時。
 布団を敷いて寝たら、なぜか気分が悪くなり寝付けなくなった。
 ウーロン茶を一杯飲んだら少し落ち着いた。