居酒屋バイト同窓会

稽古初日が、別の練習になる夢を見た。
・女子二人マイム
・母留守電
・ロッチさん?と挨拶
・ばらし、ゴミ捨て
・「捨てといて」と言う
起きてすぐにメモっておいたのだが、何のことかまったくわからない。

朝、シーチキンと醤油のスパゲティを作って食べる。
マヨネーズ醤油ではなく、醤油とニンニクだけ。
想像していたほど美味くはなかった。

昼、ガストでランチ。
ノートに手書きで台本を書く。

夕方、三丁目の鳥貴族へ。
居酒屋でバイトしていた時の仲間と会う。

連絡してきたのはタジリくん。
すでにFacebookで繋がっていたので、何となく「会っている」ような気がしていたが、直接会って話すのは19年ぶりだった。
ほかに、アマダさん。
彼女は、中野の居酒屋でばったり会ったことが一度あったが、それだって十数年前だ。

テーブルに座って数分会話をしただけで、かつて仕事あけにしていた雑談の調子が蘇った。
7時にもう一人の仲間、ヒラノくんと待ち合わせるために、いったん外に出る。
彼も、会うのは19年ぶりだった。

四人そろってから、店を鳥どりにうつす。

タジリくんもヒラノくんも、結婚して子供がいるそうだ。

我々がバイトをしていたのは90年代の中頃だった。
一応おれが先輩だった。
タジリくんはオレより先にやめ、美容師の専門学校に通い、いまでは店長をやっている。
アマダさんはオレがやめてからも働いていたが、何年後かに別の店に移ったという。

「店が潰れたころ、どうだったの?」
「終わりのほうは最低でしたよ」
アマダさんは言った。

ヒラノくんはまだオレがいた頃社員になり、数年間働いた後にやめ、SEに転職したとのこと。
「店での経験が大きかったですよ」
ヒラノくんは言った。

話し出すと、忘れていた色々なことをたくさん思い出した。
オレがバイトの中で、ベテラン扱いされ始めた頃に、タジリくんとヒラノくんが入ってきた。
まだ少年みたいに見えた。
その1年後、オレはいったんやめ、タジリくんとヒラノくんがホールの主力となる。
その頃入ってきたのがアマダさん。
面接の時、髪が真っ赤だったのを、ホールに出るために黒く染めたという。
オレはやめて四ヶ月後に出戻り復帰した。
だが、タジリくんたちのようにガンガン働いてはいなかったので、その頃の思い出は乏しい。
復帰して1年半後くらいから辞めるまでは、週5ペースで働いていたので、その頃のことはよく覚えている。
「店入った頃、つかさん、めちゃめちゃ大人に見えましたよ」
「でもこっちだって23歳だよ。今考えたら若造もいいとこだよね」
オレが入ったのは21歳の時だが、教えてくれた先輩たちがめちゃめちゃ大人に見えた。
あの店で働き、色々な人と接することで、オレは大人になったんじゃないかと思う。
それまでは、同年代の連中と比べて、どこか子供っぽかった。

思い出の中で一番驚いたのは、アマダさんに言われたことだった。
「つかもとさん、伝票に書く自分のサインを、幻、ってしてましたよね」
そうだった。
みんなそれぞれ自分の名字や名前を一文字使ったサインをしていたのに、なぜかオレは、幻、と書いていたのだ。
なんでそんなことしてたのかわからないが、オレならやりそうだなあと思う。
そして、とても恥ずかしかった。

飲んでいる途中で、胸焼けがしてきた。
話は楽しいのだけど、食べたり飲んだりする方はすすまない。
妙だなと思った。
11時に店を出てみんなと別れ、地下鉄に乗ると、胸焼けはますますひどくなってきた。
そのうち、不意に思い当たった。
日曜日にフライパンで焼いた冷凍牡蠣だ。
あれにあたったに違いない。
最初に食べた三つが、生焼けっぽかったので、焼き直して残りを食べたのだ。

稽古間近というのに、ここで倒れるわけにはいかない。
どうしようと悩むうち、食中毒にはコーラが効くという話を思い出した。

コーラの500ミリ缶を買い、寝る前に飲んでみた。
ジョギング中に胸焼けを起こした時、炭酸飲料で治るというのは経験的にわかっている。
同じ理屈で胸焼けはおさまったが、今度は背中がぞくぞくしてきた。
風邪の症状に似ている。
これはまさに牡蠣だ。
二年前の時と同じだ。
とにかく寝た。寝るしかない。