稽古場を間違える

 昼の2時に香ちゃんの劇団の稽古のため砧小学校へ。
 用務員さんが校舎の鍵を開けてくれたので聞いてみた。

 「劇団の稽古でお借りしてると思うんですが」
 「えっ? 聞いてないなあ」
 「そうですか。ちょっと電話してみます」

 香ちゃんに電話をしてみた。

 「砧小学校に着いたんだけど」
 「そうですか。それじゃあ今降りていきますね」

 電話を切って用務員さんに、
 「今から降りてくるそうです」
 「降りてくる?」
 用務員さんは気味悪そうに校舎の中を見ていた。

 やがて電話が鳴った。
 「あの、香ですけど、ドカさんどこにいらっしゃいます?」
 「校庭の入り口だよ。子供たちがサッカーしてるでしょう」
 「えっ? 子供たち? サッカー?」
 不安になってきた。

 「あのさあ、砧小学校でいいんだよね」
 「ええ。砧南小学校です」
 「えっ? 南?」
 「ええ。えっ? 砧小学校というのもあるんですか」
 あるのだ。そしてそこに行ってしまったのだった。

 用務員さんに礼を言い、歩いて砧南小学校へ向かう。
 しかし、別に礼など言う必要はなかった。
 会釈くらいでよかった。

 砧南小学校に着いたのは予定より40分遅れだった。
 音楽室らしき部屋で稽古をしていた。
 団長さんに慫慂され、シーンの演出をつけさせてもらった。
 劇団メンバーは10人ほどいて、基本的にミュージカル劇団なので、ストレートプレイはどうやったらいいかわからないことが多いらしい。

 稽古してきたことを崩さない形でより良いシーンになるようなアドバイスを与えるように心がけたが、やはり手をつけ始めると色々いじりたくなってしまうのは、演出をする者の性か。
 団長さんが、
 「ドカさんのいいと思うようにやってください」
 と言ってくれたので、稽古後半からは割と好き勝手にやらせてもらった。

 9時近くに稽古終了。
 団長の車で吉祥寺まで送ってもらった。
 稽古場から車中に至るまで、劇団の女優さんたちから「お住まいはどこなんですか」という質問を6回くらいされた。

 9時半帰宅。
 阪神はマジック2の状態で足踏みを続けている。
 結局優勝は甲子園へ持ち越しとなった。
 95年のオリックスもなかなか決められなかった。
 確か、2位のロッテが異常にしぶとかった。
 バレンタイン監督だった。