森繁久彌・久世光彦「大遺言書」読む。
森繁さんの語りを久世さんが聞き書きしたものだ。
月に2回森繁宅に通って、インタビューをしたのだという。
聞き書きとはいっても森繁さんの言葉に久世さんの注釈がつくというスタイルなので、著者は久世光彦であることに間違いない。
向田邦子ドラマ脚本デビューの話、女優悠木千帆(樹希樹林)誕生秘話など、面白い話がぎっしり詰まっている上に、要所要所に引用される森繁さんの語り言葉には臨場感があって、読んでいると声が聞こえてくるように思えた。
森繁さんの怖いところは、ところかまわず、相手が誰であろうと、芝居をしかけてくることだ。
ボケたふりをして女優の手をとると、
「ところで、私、あなたとは、いいコトいたしましたっけね?」
などと聞くなどする。
エロジジイの演技をして、相手を観察するのだ。
映画「もののけ姫」の記者会見でも、よろよろの爺を演じながらマイクまでゆっくり歩き、開口一番「わたくしは、まだ、生きております」と言って笑いをとっていた。
「大遺言書」でしびれるエピソードが一つあった。
勝新太郎が監督した「座頭市」に出演した時、撮影が終了したにもかかわらず、夕焼けの美しさに目をとめた勝新は森繁を岩に座らせ、自分も森繁の背中に背中をつける形で座り、カメラを回させた。
むろん、台本もなにもあったもんじゃない。
勝新はいきなり、
「よう、じいさん、あれやってくれよ」
とけしかける。
すると森繁は、
「あれか・・・」
とつぶやくと、即興の都都逸をひねった。
これが、名シーンとなったという。
夜、日本シリーズ第3戦見る。
はじめから終わりまで緊張感の漂うすばらしいゲームだった。
第2戦が一方的な展開だったのでこのまま大味な試合が続くのか危惧していただけに、今日の好ゲームは嬉しかった。
しかし試合後の星野監督は、監督インタビューに向う足取りが重く、声はうわずっていた。
明らかに体調が悪いとわかった。
それでも「吉野がすばらしかった!」と肝心の台詞は声を張っていた。
サンケイスポーツに連載している野村克也の日本シリーズ分析が非常に面白い。
試合を作るのは捕手だという考えに基づき、配球の分析から選手交代の妙味について、論理的に語っている。
今日の試合の分析が楽しみだ。