夜の壁

 案の定、朝は辛かった。
 だが、人が思うほど辛いわけでは、たぶんないのだ。
 なぜならそれは<おなじみの辛さ>だからだ。
 ノイローゼになることもないし、辛いと思うことさえ忘れることがある。
 「なんか眠いぞ」
 みたいな感じだ。

 夜更かしに深酒が加わる時がある。
 昨日がそうだ。
 なぜそういうことをするのかというと、やはり眠る為だ。

 寝つきをよくするために酒を飲むのではない。
 起きていることをあきらめるために飲むのだ。
 ほろ酔い程度では起きていられるから、起き続けてしまう。
 だからかなり飲む。
 しかし昨日はどういうわけか、いくら飲んでもまったく酔えなかった。

 寝ることに対するこの歪んだ状態は、今の自分からかなりの力を削いでいる。
 無駄になっている時間は膨大だろう。
 構造改革が必要だ。
 そのためには、夜の壁の正体を明らかにしないといけない。
 布団と自分の間に聳え立つ、心理的な壁だ。

 眠ることは好きだ。
 しかし、寝る行為を始めるのは、なぜかいつも後まわしにしている。
 寝る行為と眠ることが、自分の中で結びついていないのだろうか?
 寝る行為を始めれば、好きな眠りが得られるのに、両者が関連付けられていないから、寝る行為に歓びがない。
 働くことと、好きなものを買うことが結びつかないと、働くことにモチベーションが得られにくいのと同じだ。

 壁を越えるためにはまず、寝る行為は心地良いのだと自己暗示をかけることから始めてみよう。

 夜、「三国志10」をやる。
 パソコンで「三国志」のゲームをやるのは初めてだったが、マウスとキーボードを使えるため、ゲーム機でやるよりむしろやりやすかった。
 プレイする武将を選べたので、自分の名前<塚本健一>で登録した新武将を選んだ。
 ただ、劉焉の息子という設定にしたため、劉璋を「兄上」と呼ばなければならなくなってしまった。
 当分は父上、いや、劉焉の指示を守り、内政に専念するつもりだ。