イチローと新記録の関係

 松島君の自主映画に出ることになった。
 15分ほどの短編。
 衣装のスーツを買うため、朝9時に中野へ行く。
 松島君、製作の石川君と3人で新規開店の店で並び、3000円で購入する。

 コーヒーを飲みながらユニクロの開店を待つ。
 松島君とプロレス話。

 ユニクロで必要なものを買い、松島君石川君と別れる。
 ブロードウェイ地下で肉を買い、12時半帰宅。

 牛モモ肉でロースとビーフを焼く。
 ガスレンジで焼いてみる。
 中心まで完全に火が通ってしまわないように、火加減を調節しないといけないのだが、完全にアナログ感覚なので非常に難しい。
 アナログ感覚の方が練習には良い。
 しかし火を弱めすぎるとまったく火が通らず、強くするとすぐに火が通ってしまうようだ。
 長く時間をかけすぎると肉汁が出てしまうし。
 本当に難しい。
 結局焼きすぎとなり、失敗した。

 図書館に行く。
 斉藤孝の本と、ファイナンス関連の本を借りる。

 イチローがシーズン安打数のメジャーリーグ新記録を達成した。
 ネットのニュースで知る。
 テレビをつけると記録達成の瞬間が流れていた。
 観客はスタンディングオベーション。
 選手は敵味方問わずイチローに駆け寄り祝福していた。

 日本では号外が出たらしい。
 テレビを見て、自分のことのように喜ぶ人々の姿が流れていた。

 見ていて胸が熱くなったが、記録の種類を考えると、野球ファン以外が大騒ぎするものとは違うように思える。

 イチローのヒットは内野安打が非常に多い。
 それは走塁の速さと、内野の守備の死角に打球を転がせるバットコントロールがなせる技だろう。
 見た目には地味だし、一発のインパクトは薄い。
 つまり、今回のような記録を達成することでしか、多くの観客を満足させられないという逆説が、イチローにはつきまとうのだ。
 ふだん野球を見ないような人が、守備の隙をついたセーフティーバントを見ても、あまり面白がれないだろう。
 今回のイチローの記録が<面白がれないヒット>を地道に積み重ねることで達成されたとするならば、イチローはファンを満足させるため常に記録を狙っていかないといけなくなる。

 イチローの試合を生で見られるアメリカより、<情報>としてしか感じられない日本の方が、記録フィーバーが冷めるのは早いような気がする。
 フィーバーが冷めた頃にやってくる理不尽なバッシングを予感すると、気分が悪くなる。

 もしかするとイチローは、このまま選手生命をアメリカで終えた方がいいのかもしれない。
 野球の歴史が長いアメリカでは、今回の記録については賞賛しながらも、ある意味冷静に受け止めているだろうし、<神>になってしまった日本より客観的評価が得られる機会も多いだろう。
 イチローもそういう評価を求めるからこそ、メジャーリーグでのモチベーションを得ているのではないか。

 夜、湯豆腐を作る。
 出汁をあさりでとってみたところ、大変滋味深い味わいとなった。
 他の鍋物をする時もあさりを使ってみよう。

 ハロルド作石の「BECK」がアニメ化されるらしい。
 ものすごく嫌な予感がする。
 「BECK」に限らずハロルド作石のマンガは<小ネタ>が面白いと言われる。
 しかし単なる<小ネタ>だから面白いのではなく、それが世界観の形成に大きい役割を果たしているから、二重に面白いのだ。
 それは漫画的に洗練されており、他ジャンルであるアニメで表現するには困難を極めるだろう。

 そんなことよりも一番の不安材料は、音楽だ。
 「BECK」は史上初めてロックを描くのに成功したマンガだと思う。
 しかし、アニメはでまだない。
 もし今回のアニメ化でロックを描くことに失敗すれば、目も当てられないことになるだろう。
 だがまあ、「BECK」の熱心な読者ならば、アニメなんか見ないだろうな。