三国志を舞台に

 夕方くらいから急に寒くなったと思ったら、粉雪が降ってきた。
 積もる感じの雪ではなかったが、一昨日17度まで気温が上がり、春の息吹を感じた人々をあざ笑うかのような天候ではある。 そんな夕方、池袋のシアターグリーンへ、ライブネットワーク公演を見に行った。
 いつも照明でお世話になっている尾池さんが、数年間暖めてきた三国志プロジェクトという企画だ。
 去年聞いたところでは、黄巾の乱以前の呉を舞台に、孫堅が活躍する話とのことだった。
 孫堅を主人公にするところと、黄巾の乱以前というところに、尾池さんの強い好みとこだわりを感じる。

 去年から新しくなったシアターグリーンだが、実際にこの目でみるのは今日が初めてだった。
 敷地は以前と同じ場所を少し広くした感じだが、5階建てくらいのビルにしているため、フロア面積が数倍にもなっているようだ。
 一つのビルに劇場が三つ入っている。

 2階のホールに案内された。
 客席の傾斜がかなりきつく、舞台のタッパはかなりある。
 最前列に座ったので、舞台を見上げる形となった。
 役者による前説が客入れの間続いた。

 本番が始まってしばらくは、あまりにも多い登場人物に頭が混乱し、話についていけなかった。
 中盤あたりから、この公演の目玉といえる殺陣が、派手に展開し始める。
 最前列で見ると、かなり迫力があった。

 人間関係も、殺陣による強弱によって推し量ることができ、中盤以降は物語を堪能することができた。
 韓当、程普、黄蓋といった、三国志ファンにはおなじみの武将が、運命に導かれるように少しずつ孫堅のまわりに集まってくる様子は、かなり『ちゃんと書かれている』
 ここまでマニアックな事柄を舞台や小説、あるいは映画や漫画化した作品は、これまでなかっただろう。

 だが、三国志を知らない人にとってみれば、取っつきにくい部分は多かったかもしれない。
 見知らぬ時代の見知らぬ国の見知らぬ英雄の若かりし頃に感情移入するのは難しいだろう。
 感情移入させるためには、話を孫堅中心に絞って、ドラマ性と演技の情感を増す工夫をすれば、三国志を知らないお客さんも楽しめるだろう。
 しかし三国志をよく知る人にとって、それは面白いものではなくなってしまう。
 初心者向けの三国志演劇を見るより、本物の三国志を読んだ方が、面白いに決まっている。

 そんな構造上のジレンマを補って余りあるのが、殺陣だった。
 よく訓練された役者と殺陣師によるスピーディーな動きは、生の舞台、それも小劇場ならではの興奮に満ちあふれていた。

 9時半終演。
 めいっぱい動いて演技する役者を心底うらやましく思った。
 ああいう、ちゃんと動く芝居に出たいなあ。

 10時半帰宅。
 スパゲティを茹でて食べる。

 『タモリ倶楽部』を見て、いも焼酎を飲む。
 タモリ主催の鉄道部入部オーディションみたいなことをやっていて、若手芸人がネタを披露していた。
 ひと組だけ面白かったが、あとはつまらなかった。