男どアホウ、は、なんの枕詞か

 この夏、一番失敗したのは、甲子園の試合を熱心に観なかったことだ。

 本日、決勝戦再試合。
 駒大苫小牧と早実の戦いが行われた。

 駒大のエース田中君と、早実のエース斉藤君。
 二人とも、見事なピッチングを見せる。
 普通、高校生クラスのメンタリティなら、ちょっとしたことで配球が乱れ、思わぬ大量点を被ったりするのだが、この二人はそうしたことがない。
 斉藤君は常に冷静沈着。
 昨日の延長15回を投げ抜いた試合でも、ピンチの時に「やばいな」という顔を見せない。
 一夜明けた今日、日本全国の婦女子は、彼にハートを盗まれまくっているはずである。

 それはともかく、オレは苫小牧の田中君が好きだ。
 投げる時の、
 「打てるもんなら打ってみろや」
 みたいな、不適な面魂。
 そして、三振を取った後に時たま見せる笑顔。
 このギャップがなんともいい。

 強引にたとえるなら、市川雷蔵と勝新太郎のようだ。
 さすがに強引か。
 斉藤君が雷蔵っぽいのは本当だが、田中君は勝新というよりは、「仁義なき戦い」の頃の菅原文太かもしれない。

 試合は、早実が4対3で勝利した。
 9回表、苫小牧が2ランホームランで1点差に詰め寄るという劇的展開があった。
 その時、早実ナインがマウンドに集まった。
 落ち着くためだろうか、各人が目をつむり、胸の前で印のようなものを形作る。
 見上げると空が青い。
 夏の空だ。
 その瞬間の、早実ナインと甲子園と太陽と空がそこにある感じは、もはや美しいとしか形容のしようがなかった。
 彼らの人生にとっても、もっとも美しい瞬間だったはずだ。
 涙が鉄砲水のように溢れた。

 今年の甲子園大会は、各チームそれぞれ個性的な選手がいた。
 まるで『ドカベン』みたいに。

 この夏、一番失敗したのは、甲子園の試合を熱心に観なかったことだ。

  1. ooyagi より:

    ああ、私が言いたかったことをドカさんが書いてくれてた。。。

    決勝一試合目だったかな?
    バントしたボールを、三塁手はファールグラウンドに切れると思って見送ったのに、ライン上でピタリと止まったシーンがあって。

    まさに殿馬の”G線上のアリア”だったんですよー。
    バッターが誰だったのかとか、忘れてしまったんですが…(ダメダメ)それをすごくすごく誰かに言いたくて…。
    ほんとに今年の甲子園はものすごくドラマティックでしたね。

  2. ooyagi より:

    ありゃ…二重投稿しちゃいました(>_ありゃ…二重投稿しちゃいました(>_

  3. ドカ山 より:

    個性的な選手が多かったね。
    鹿児島工の今吉君なんか、代打専門というから驚きだ。
    彼も実にいい顔してるよね。
    腰が悪くて、打つことしかできないらしいのに、悲壮感がまるでない。
    そんな選手、20年前の高校野球なら、絶対に出て来なかったもんね。
    いやあ、全試合をもう一度振り返りたいね。
    斎藤くんは水谷豊にも似てるね。