余熱で、見てきたようなことを言う

 早実の斎藤君は案の定、婦女子のハートをわしづかみにして揉みほぐし去った。
 婦女子は携帯カメラ片手に大阪駅、新幹線、そして国分寺の早稲田実業まで斎藤君を追い回したと聞く。
 当の斎藤君がまだ、甲子園のヒーロー慣れしていないため、追う者と追われる者の絵にのどかさが漂う。

 斎藤君は試合中何度もハンカチで汗を拭いた。
 あれが、婦女子心揉みほぐしの決め手となったに違いない。
 あの年頃の男の子が、きちんと折りたたまれたハンカチを使って汗を拭く姿は、理屈抜きに可愛いわけだ。
 母親のしつけを感じさせるところ。そこに、ツボがある。
 姉のしつけ、でもいい。

 ベスト4まで進んだ鹿児島工業には、今吉君という代打専門の生徒がいた。
 代打専門の理由は、腰が悪くて守備や走塁ができないためらしい。
 しかし、代打だけでもいいじゃないかとベンチに入れた監督の判断には頭が下がる。
 その監督も、異常なほど涙もろい。
 インタビューを受けるといつも泣いている。
 面白いチームだなあ。

 それらの映像はすべてYouTubeで後追いしたので、リアルタイムでは見ていない。
 しかし、今年は本当に面白い大会だった、ろうなあ。
 初めからちゃんと見てればね。

 今吉君は身長165センチくらいらしいから、腰が治ったとしても、プロがスカウトに来るとは考えにくい。
 でも、そうした<進路のこと>を吹き飛ばす、その場だけでしか輝けない輝きが、彼のスイングにはあったと思うのだ。
 夢は大会社の社長らしいから、ぜひ、叶えてもらいたい。

 夕方、実家へ。
 にんにくのたっぷりきいた焼き肉を食べる。

 疲れがたまっていたのか、小一時間ほどうとうとする。
 その後、荒川河川敷までジョギング。
 土手の上で自主トレ。
 右肩に古傷あり。両手を振り上げてジャンプすると痛む。