野球の話ばかり

 『アニー・ホール』を久しぶりに観て思ったのは、男と女が出会い、一緒に暮らし、やがてすれ違い別れていく話というのは、30年前も今もかわらんなあということだった。
 ウディ・アレンの映画は結構観ているのだけど、『アニー・ホール』は確か初めて観たのが大学三年の時で、それが初めて観るウディ・アレン作品だっただけに、かえって記憶に残っていなかった。
 今日、十数年ぶりに見直して、改めて80年代以降に作られたウディ・アレン作品との相違を感じた。

 まず、主演女優がダイアン・キートンであることが大きい。
 80年代以降はほとんどが、私生活のパートナーでもあったミア・ファロー主演であるが、のちの核実験みたいな破局が画面を見ていると否が応でも想起され、なんとなくブルーな気分になるのを止められなかったりする。

 『カメレオンマン』で、ミア・ファロー演じるフレッチャー博士をさして、
 「女医は美人」
 という台詞があったけど、
 (うん…美人…だよね)
 と、…が二つ入ってしまうような納得の仕方をしたものだ。

 なんというか、ミア・ファローに女を感じる男は、あまりいないんじゃないかと、失礼なことを書いてみる。
 演技は達者なのかもしれないど、えさをもらうときのひな鳥がそのままの形で大きくなったみたいな感じが、脳内処理フィルターなしで褒め称えることをためらわせる。

 『アニー・ホール』を観て、ダイアン・キートンにそうした感じをまったく抱かず、むしろかなりリアルに女を感じてしまったのは、年をとったせいだろうか。
 カウンセリングを受けるシーンも、1977年当時の日本なら異質に見えたかもしれないが、現在ならむしろ普通に見える。
 カップルが同じ画面で別のカウンセラーに相談しているシーンは笑える。
 ただ、ポール・サイモンは、昔なら許容範囲だったかもしれないが、今観るとかなりイケてない。
 特に髪型が。
 楽屋の藤山完美って感じだ。

 徐々に徐々にやるべきことをやる。
 今日はそういう日。

 朝顔が枯れ始めた。
 9月に入ってつぼみをいくつかつけたというのに、このところ続いた寒さゆえか、末端まで生命のエキスが行き渡らないかのように、ゆっくりとしおれてゆく。
 植物が枯れていくのを見るのは辛い。
 アパートの階段に月曜日からずっと仰向けになった蝉の死骸が転がっているのを見るのも辛い。

 阪神が中日に一矢報いた。
 時すでに遅い1勝ともいえるが、まだ直接対決は残っている。
 ゲーム差は6。
 中日がこけない限り、ひっくり返すのは難しいし、中日としては阪神戦の勝ち越しで俄然意気上がるところだ。
 それでも、最後まで諦めないという、泥臭い戦い。
 そのあたりが、星野監督が阪神に残した遺産ではなかろうか。

 パリーグだが、すでに西武、日本ハム、ホークスがプレーオフ進出を決めている。
 チーム力で西武、勢いで日本ハムという気がするが、やはり本音としてはホークスに優勝してもらいたいところだ。
 が、いかんせん今年は昨年と比べ、打撃の迫力に乏しい。
 チーム本塁打数も100本に満たぬ少なさで、日ハムや西武と比べて40本以上少なく、最下位の楽天と同じくらいなのだ。
 にもかかわらずというか、それゆえにというか、防御率はさすがに高い。
 が、それだけで勝てているとも思えない。
 勝つために必要な間合いというものがあり、ホークスというチームにはそれが備わっているように思える。
 つまり、必要最小限の労力で勝つ、見切りの境地である。

 20年前のホークスは大変弱いチームで、しかも人気がなかった。
 現在の強い強いホークスに変貌したのは、王監督の功績だけではない。
 93年オフに移籍した秋山など、元西武ライオンズの選手が、強いチームの遺伝子を持ち込んだことが大きい。

 ではその西武は、いつから強くなったのか。
 それは1982年に広岡監督が就任してからだ。
 広岡 → 森 と、強い遺伝子が引き継がれてきた。
 いや、強い遺伝子ではない。
 常勝の遺伝子だ。

 広岡監督はその前に、ヤクルトを優勝させている。
 その前は広島のコーチ。
 さらにその前は、巨人の内野手。
 だが、川上監督と衝突してやめている。

 川上監督といえばV9巨人を率いた名監督だ。
 だが、後任の長嶋監督は、川上野球の継承者とは言いづらい。
 むしろ、NHK解説者時代に野球論を根掘り葉掘り聞いたという星野仙一の方が、理論的には正当な後継者といえる。

 ヤクルトも、かつては本当に弱かった。
 が、90年代以降、むしろAクラス常連のチームと変わった。
 もちろん、野村監督の功績だ。
 野村監督といえば、南海ホークス出身で、当時の監督は鶴岡一人。
 鶴岡一人はもはや伝説的な監督で、勝率は川上監督を超える。
 データ野球を取り入れたのもこの人だから、ノムさんを鶴岡監督直系と見なすのは間違ってないと思う。

 広岡監督は川上監督と確執があったとはいえ、両監督とも本質的には管理野球だから、その野球の源流は巨人にあると思う。
 巨人のようなスマートな野球の正反対にあるのはなにか?
 それは、野武士野球。西鉄のような野球だ。
 すなわち、三原監督の野球。
 三原監督の直系として思い浮かぶ監督は…
 仰木監督。
 おお、見えてきた。

 西鉄で、稲尾や中西が大活躍した姿。
 それを、仰木監督時代の近鉄やオリックスにダブらせると、野茂やイチローの存在が浮かび上がる。

 鶴岡監督の野球は?
 テスト生入団の野村克也にチャンスを与え、パリーグを代表するバッターに育て上げた。
 野村監督の野球は?
 江夏にストッパーとして活躍の場を与えるなど、野村再生工場の異名をとった。
 失礼な言い方になるが、冷蔵庫の余り物で、極上の献立を作り出す料理人の腕に似ている。

 現在のプロ野球における常勝チームの遺伝子。
 その源流は三つ。
 巨人のような野球。
 西鉄のような野球。
 南海のような野球。
 そこから枝分かれしていると考えればいいんじゃないだろうか。

 落合監督が選手時代、もっとも厚く信頼した監督はだれか?
 それは、ロッテの稲尾監督である。
 元西鉄の。
 野武士野球の。

 現在の常勝・中日は、一見何気ないふうを装いつつ、その遺伝子は野武士野球を受け継いでいる。
 そう考えると、むしろ巨人みたいな野球をしてきた星野時代の方が、中日のカラーとは相容れないではないか。

 ざっくりまとめる。
 西武、ソフトバンク、阪神は、巨人のような野球。
 中日は、西鉄のような野球。
 ヤクルトは、南海のような野球。
 現在のペナントレースは、そういう風に分析できる。
 すると、現時点の順位はどうなるか?

 セリーグ     パリーグ
 1位 西鉄      巨人
 2位 巨人      巨人
 3位 南海      日本ハム
 4位 広島      ロッテ
 5位 巨人      オリックス
 6位 横浜      楽天

 なにがなんだかわからない。

 古葉監督の広島と、西本監督の阪急と近鉄は、どの系列に入るのだろう。
 古葉さんは野村監督時代の南海でコーチをしていたらしいが、だからといって野村直系とは言い難い野球だと思う。
 西本さんの場合は、やはりこの人そのものが源流なんだと思う。
 上田監督が、いわば直系か。

 いずれにせよ、現在<弱小>と言えるチームを常勝軍団にするためには、チームカラーにあった遺伝子プランを見込み、監督の招聘を行わねばならない。
 巨人型は、チームカラーを染めるためには監督の強烈なカリスマ性が必要。あと、時間もかかる。だが、長持ちする。
 南海型は、能力をまだ最大限発揮されていない選手のカオス状態が必要。データ重視の緻密型。
 西鉄型は、南海型と同じだが、データよりは肉体重視の奔放型か。

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