酒を控える

 明け方、金縛りに遭った。
 こんなもの、そうそう遭うものではない。
 両腕と両足が効かないのに、頭ははっきりしていた。
 特に霊的な存在は感じることなく、
 (ああ、金縛りだな)
 と思って、腹式呼吸を繰り返した。
 ヘソの下に息を入れる呼吸法を繰り返したが、金縛りはなかなか解けない。
 このまま寝てしまおうかと思ったが、仰向けの状態で両手両足が金縛りに遭うと、なんだか床に押さえつけられているような気がして気分が悪い。
 (そうか、この、押さえつけられているという感覚が、金縛りに遭う人の心を乱すのだな)
 と妙に冷静に思いながら腹式呼吸を繰り返したら、やがて両足の金縛りが解けた。
 足を使って右側に寝返りをうつと同時に、両腕も自由になった。

 昨日は久々に酒を飲んだので、体がびっくりしたのだろうか。
 今週はずっと酒を控えている。
 酒を必要とするのは体ではなく気持ちなので、稽古が始まる前のうちに酒のない生活に慣れようと思っている。
 こんなことを書くと、普段よほど飲んでいるかのようだが、ビール2缶くらいだし、酔いを自覚することも滅多にない。
 が、ほぼ毎日飲んでいることに変わりはない。
 水代わりに飲むならジュースでもいいのに、なぜ酒を飲むんだろう。
 酔いが心地よいからか?
 しかし、店ではなく自分のうちでほんのり酔うためには、最低でもビールのロング缶2缶以上は必要だ。
 なので、それ以下の量を飲むことにあまり意味はない。

 というわけで、今回の公演が初日を迎えるまでは、酒をなるべく控えることにした。
 稽古をすれば当然、つき合いの飲みはあるだろうし、そういう飲みは断らない。
 が、うちに帰ってとりあえず飲むというのは、やめてみよう。
 もう自分は20代の体ではない。

 夜、野菜スープを作って食べる。
 ハインツのスープに、冷凍食品の野菜を混ぜただけ。
 今日は、色々な意味で、思索の日だ。
 本を読み、音楽を聞き、自分自身を見つめ直し、気を練っていく日。
 充電といってもいい。