『大系 黒澤明』2巻読了。
『用心棒』から『赤ひげ』にかけての黒澤作品は、興行的にどれも大当たりだったのだろうと思っていたが『赤ひげ』はそうでもなかったらしい。
もちろん赤字ではないのだけど、制作期間がべらぼうに長かったため、予算が大分かかってしまったそうだ
映画の観客人口現象が深刻になってきた時期とも重なっている。
黒澤監督がハリウッド資本で自作を撮るのは、東宝にとっても黒澤プロにとっても本人にとっても、願ってもないことだったようだ。
だが最初の企画『暴走機関車』は頓挫し、次の『トラ・トラ・トラ』は監督解任という最悪の結果に終わる。
『トラ・トラ・トラ』に関しては、よくもここまで悪条件が重なったものだなあと思う。
悪条件というより、誤算といった方が正しいか。
演出効果を狙って一般企業の管理職に将官の役をやらせるも、素人だから芝居はできない。
監督はイライラして怒鳴る。
その気にさせるため、役者に軍服を着せたり、撮影所内を行進させたりする。
将官クラスの役者に撮影所内会ったら敬礼するように言う。
場所は東映の撮影所。
ヤクザ映画の撮影をやっている連中が、バカにしたような顔で見る。
撮影を進めろと、プロデューサーからは矢の催促。
撮れなかったら、黒澤プロは破産する。
ところが装置のカーテンに折り皺がついたまま。
衣装の軍服に替えがない。
手紙のシーンで使う小道具から果たし状が出てくる。
助監督無能だ出ていけと怒鳴ると、ほんとに出て行ってしまう。
撮れない。
借金は刻一刻と膨らんでいく。
ノイローゼによる降板とは、違約金支払いを避けるために仕組まれたことらしい。
だが黒澤監督は、自分はノイローゼではないし、最後まで撮りたかったと記者会見をする。
その気持ちはわかる。
製作条件に対して黒澤さんはオーケーを出したらしいが、借金のことを思えば、オーケーを出さざるを得なかったのではないか。
おまけに、黒澤さんは<総監督>を任されたと思っており、プロデューサー側は<日本軍のパート部分の監督>と思っている。
編集の段階でもめないはずはない。
どう転んでもうまくいきそうにない。
むしろ、下手に進行させて致命的結果を得なかっただけマシだったのではないか。
そう思えてならない。
久々に晴れた。
だが、左足のひびのせいで走れなかった。
焦っても仕方ないというのはわかっているが、腹が立ってしようがない。
薬局に行き、足の肉刺をカバーするジェルシートを買った。
それを患部に貼ってしばらくすると、普通に歩けるようになった。
近所の住宅地にあるケーキ屋でモンブランを買って帰る。
車でわざわざ買いに来る人がいる店らしい。
コーヒーを入れて食べる。
クリームが非常に美味かった。
夜、ハヤシライスを作って食べる。