稽古3回目

稽古の焦りは、完全に自分の中だけで進行しているようだ。
過去の公演データがある。
いつ台本が完成し、その時点で本番まで何日残していたか。
上演時間は何時間で、台本完成時に残りの稽古日数は何日だったか。

これまで一番早く台本が完成したのは2004年に上演した『第二ゾーンへ』だった。
本番のひと月前以上にあがったのだが、その時点でまだ役者が全員決まっていなかった。
完成した台本を何部もコピーして、あの役者さんこの役者さんと出演依頼をかけたのだけど、出演者トータル人数に近いほどの役者さんに断られてしまった。
全員きまったのは本番3週間前を切ってからだったので、台本が先にあがっていたとしても、稽古に余裕は全くなかった。

一昨日の稽古では、自分の焦りが先走っていることを感じて、そのことを反省した。
一番落ち着いていなければならない立場の人間が、じたばたしてどうするんだということだ。

仕事が忙しいというのも、稽古に影響を及ぼしている。
だがそれも、自分に限った話じゃない。

気負いだろうか?

仕事は忙しいまま、夕方になった。
定時にあがり、稽古場へ行く。
前回よりも落ち着いた気持ちで。

美術の松本さん見に来る。
稽古をするにあたっては、はけ口とワーキングエリアがどのくらいあるのかが、結構重要な要素になる。
それを簡単に決めてしまえないところが、自分の芝居作りのアキレス腱になっている。

簡単に決めていいわけではないのだけど、ずるずる決断を引きずると、あとで色々ひどい目に遭う。

やっぱり、台本をはやく最後まで書くしかない。
尻に火がついた状態に、いつもより早くなるしかないのだ。

稽古後、松本さんと打ち合わせ。
遠近感のつけ方など、別の視点から意見をもらう。
なるほどと思いながら、楽屋と役者の待機場所についても、真剣に考えねばならない。

12時前に店を出る。

今回の話の芯になるものはなんだろう?
質問されて、短い言葉ですぱっと答えられなかった。
初演の台本で再演するわけではないのだが、初演時の台本を読んで、芯になるものがわかるわけではない。
役者が、芯を作っていた。

台本が下手でも、役者が埋めることで、成り立っていないところを埋めていた。
それが、昔のマグだ。

技術というより、若さと熱情とこだわりとプライドだったろう。

そのエネルギーは役者のものなのに、役者としてではなく演出として関わることで、かえってエネルギーの発する場から距離を置かざるを得なくなり、それが長いこと悩みの種になった。

(おれも、そういう風に、わーってやりたいのに、加われないポジションにいる)

今回はどうなるだろう。