6時前に起きて、赤くなりかけていたトマトの様子を見たら、茎になかった。
ちょっと離れたところに、へたの食べ残し部分が落ちていた。
一昨日か昨日数えた時は17個あったが、今は13個だ。
ここ最近、収穫できなかったのは、やはりカラスの仕業と見た。
たぶん、今朝の一個だけじゃなく、オレがいない間に他のも食われていたんだろう。
どうも最近、実がならないなあと思っていた。
今日くらいに沢山摘めるはずと思っていたのに、赤くなりかけていたトマトがない。
4個以上は確実に、やつに持ち去られているだろう。
頭に血が上った。こんちくしょう。
対策を立てないといけない。
7時半、走りに行く。
水道道路を神田川まで走り、西永福、高千穂大、五日市街道のコース。
6キロちょっとだった。
風呂に入り、金曜の夜に摘んだトマトを見る。
常温に置いて追い熟しているので、摘んだ時よりも赤くなっている。
カラス対策はテグスがいいと、色々なサイトに書いてあった。
だが、二株しか植えていないのに、テグスで囲むのは、大げさだし、何よりオレが動きづらくなる。
他には、実の部分をネットにくるむというのがあった。
これは、沢山のトマトを育てている人には、多すぎて大変だが、逆にオレは大丈夫だ。
9時を過ぎると気温がぐんぐん上がってきた。
ネットで地図を見る。
一番近く、なおかつきれいな海はどこだろう。
海岸近くに電車の駅がある海水浴場は意外と少ない。
片瀬江ノ島くらいか。
泳ぎたいというわけじゃなかった。
釣りは?
本牧の海釣り施設は、すでに混雑しているらしかった。
そもそも、釣りなんて、夏の真っ昼間にやるもんじゃない。
なら渓流はどうかと調べたが、そこまでして釣りがしたいってわけでもない。
どっか、涼しい木陰で、ビールなど飲みながら本が読めれば、さしあたりどこでもいい。
奥多摩か?
レンタカーを調べたら、1時間ちょっと後の予約があっけなく取れた。
11時過ぎに東高円寺で車を借り、さてどうしたものかと思いながら、とりあえず環七を下り、20号を西に向かった。
信号待ちの間に、檜原村の数馬の湯を目的地にした。
そして、車に乗った時点で、涼しい木陰でビール飲むことができないのに気づき、テンションが下がった。
しかも、本を持ってこなかった。何しに来たんだオレは。
ウォークマンも持ってこなかった。
仕方ないので、テキトーに知ってる歌を歌いながら運転した。
1時過ぎに武蔵五日市へ。
コンビニでアイスコーヒーを飲んで休憩。
薪を売っていた。
武蔵五日市を過ぎると、道は山道になった。
のらりくらりと安全運転し、2時過ぎに数馬の湯に着いた。
まあ温泉だ。
入ってゆっくりして、上がったら体重とか血圧測ったり、足を機械でもむマシーン試したりとかすれば、文句なしに休日っぽい。
で、入ったのだが、タオルを持っていなかった。
仕方なし。
サウナ、水風呂、露天風呂、それなりに堪能した後、体を流して、露天風呂の外にある椅子に座って体を乾かしてから上がった。
何とかなるものだ。
蕗の薹味噌を買い、4時半に出る。
飯を食っていなかった。
その前に、カラス対策だ。
数馬から山を降り、五日市を過ぎ、あきる野のダイソーに入った。
5時半だった。
そこで、「どんとキャット」という、野良猫やカラス対策のシートを見つけた。
プラスチックの剣山みたいなシートで、刺さらないが、踏んだら痛いので、近寄れないというもの。
6枚買った。
トマトをくわえられるあたりに敷いておけば、近寄れないはず。
それと、三角コーナー用ネットを買った。
これでトマトの実を包んでおく。
車に戻り、飯をどうしようか考える。
東小金井の「宝華」に寄ろうかと思ったが、月曜は定休日だった。
こういう時でないとなかなか行けない、「ラーメンショップ椿」に行くことにした。
多少の渋滞はあったが、7時過ぎに「椿」へ。
食券を買おうとして、ラーメンの「大」がないことに気がついた。
なくなったのだろうか。
もともとボリューミーだし、需要が少なかったのかもしれない。
チャーシュー麺の中を頼んだ。
食べてみて、違和感を覚えた。
スープが塩辛い。
美味いには美味いが、つけ麺並の濃さでは、スープを一緒に飲むことは出来なかった。
オレの味覚のせいか。
それとも、椿が変わったのか。
青梅街道に出て、いつもうっかり通り過ぎる練馬のスタンドでガソリンを入れる。
いい加減、自分で歌うのにも飽きたので、ストリートファイター2のキャラ真似をした。
「波動拳!」
「昇竜拳!」
波動拳は真面目な技で、昇竜拳は自暴自棄な技であるのが、言い方でわかる。
それは、リュウとケンの違いでもあるんだなと、真似をしながら思った。
波動拳! という言い方には、秩序を感じる。
師匠から教わり、訓練して身につけた技を、生真面目に繰り出すというイメージ。
かたや、昇竜拳! という言い方は、身ひとつでアメリカに渡って、ジャップ嫌いのチンピラ達に取り囲まれてボコボコにされ、絶体絶命という時に繰り出す、起死回生の技という印象だ。
あくまで、言い方から逆算してのことだが。
8時半前に車を返した。
9時過ぎ帰宅。
声が嗄れていた。
「波動拳!」
「昇竜拳!」
と、車の中で50回くらい叫んだせいだろう。
すぐ、トマト周辺の防御工作活動に入る。
ネットに実を包むのは、カラス以外の鳥には効果がありそうな気がした。
カラスがネットごとくわえようとしたその時、地面にシートがある案配にしておけば、敵にとってはストレスに違いない。
そうだ、鈴をつけるという手もあった。
チリンチリンと不自然に鳴れば、ベッドから飛び起きたオレは庭に突進し、こう叫ぶだろう。
竜巻旋風脚!