修善寺で昔探し

4時に車中で起きた。外は暗かった。雨が激しく降っていた。日の出時間は5時過ぎだった。それまでに晴れ間ができて、東の空に曙光がさすなんてことがあったらいいなと思ったが、雨の降ったりやんだり攻撃は、空が明るくなってきてもやまなかった。

5時になり、日の出を拝むのは無理と諦め、しばらく車中でうとうとした。6時前に起きると、車が二台ほど入ってきていた。雨はやんでいた。日の出は拝めなくても、城ヶ崎の断崖は見たかったので、外に出た。

台風10号の影響からか、波がとても高くなっていた。断崖にうちつけると、何十メートルの高さまでしぶきが舞い上がっていた。
朝日をここで見ようと思っていた吊り橋に行くと、若者4人組がいて、降りかかってくる波しぶきに奇声を上げていた。

城ヶ崎から修善寺方面へ移動する。途中、ファミリーマートに入り、軽食を食べて、1時間半ほどスマホを充電した。

目的地は早霧湖周辺の別荘地だった。知り合いの家の別荘に子供の頃よく行った。しかし、最後に行ったのが9歳の時だったので、大人の目で確かめてみたかった。

別荘地は、ひと山をいくつかの区画に分けて開拓されており、子供の頃に行った別荘は、第一期に属する場所のようだった。
場所はなんとなく覚えていたが、建物の外観は記憶がおぼろだった。それでも、階段と入り口の位置関係を頼りに、目的の家を見つけることができた。

想像していたよりも綺麗だった。持ち主は母の友人夫婦だったが、今も所有しているのかはわからない。

しばらく、そのあたりを散策した。一段上の分譲地にある管理人の家に行ってみた。そこの池で遊んだ覚えがある。

家は荒廃していた。今も管理人の家なのかはわからない。池はまだあった。昔は、巨大な鯉が泳いでいて、水面に落ちたものは何にでも食いついていた。

車で、山の上の方まで上ってみた。子供の頃はまだ別荘地化がされておらず、道だけがあった区画だ。そこも、今は別荘地になっていた。第一期の区画よりも綺麗な建物が多かった。

早霧湖に行ってみた。
何もない湖だった。ヘラブナを釣ることができるようだったが、昔と違ってヘラブナ釣りをする人の数は多くない。わざわざここまで来て釣りをする人がいるのだろうかと疑問をもった。もしかすると、別荘地で隠居生活を送っている人が、ふらりと訪れるのかもしれない。

別荘地と早霧湖の間に、ソーラーパネルがたくさん設置された場所があった。昔はそこにプールがあったはずだ。今はなかった。あったとしても、水質の管理が大変だろうし、泳ぐ人もいないだろう。

11時に修善寺方面へ。

「安兵衛」という店で、昼飯にずがにうどんと鮎の塩焼きを食べた。テレビがついていて、甲子園の試合をやっていた。中京と東海大相模の、古豪同士の試合だった。

ズガニは、川に棲むカニらしい。それでとった出汁に、ほぐれた身が溶け込んでいた。うどんは細めだった。
鮎は小さかったが、狩野川でとれた天然ものなのか、とても美味だった。

修善寺あたりを散策した。

「源楽」という和菓子屋で、まんじゅうの味見ができた。ごま餡のをひとつ食べてみて、旨さに驚いた。ミシュランガイドに載る店らしい。

十三夜焼きという、まんま今川焼きが売られていた。抹茶クリーム餡を一つ買って食べた。

1時だった。夜の宿を熱海にとっていたので、早めに向かうことにした。

2時、熱海到着。晴れてきていた。お盆とはいえ平日なので、明日よりは空いているだろうと思い、サンビーチで泳ぐことにした。

ビーチはそこそこ混んでいた。防波堤を沖に沈めているためか、波が穏やかだった。しかし、ほんの少し沖へ行くと足が地面に着かなくなった。
背浮きをして漂い、平泳ぎで海岸と並行に泳いだ。

1時間と少し泳いで上がると、岩場においていたサンダルがなくなっていた。盗まれたかと思ってそのあたりを探すと、片方のサンダルが波で岸辺に打ち上げられていた。すぐに拾った。おれのだ。どうも、風で飛ばされて海に落ちてしまったらしい。
もう片方も打ち上げられてこないかと、しばらく波打ち際でキョロキョロしていたが、たぶん沖に流されてしまっただろうと思い、諦めた。

体を洗い、裸足で駐車場に戻り、靴に履き替えた。

4時だった。車はそのまま停めておき、駅の方まで歩いた。

駅向かいビルの地下街にある「まぐろや」で夕食をとり、アーケード入り口の喫茶店でかき氷を食べた。

宿は、一応ビジネスホテルと謳っているが、連れ込み旅館風の建物だった。風呂も小さかった。泊まれる以外なにもない宿だったが、不思議と悪い気がしなかった。つげ義春の漫画に出てくるような宿だと思えば良かった。

疲れていた。そりゃそうだよなあ。耳が痛かったが、疲れからくるものではないかと思った。

買って来たビールを部屋で飲んだ。8時に寝たが、12時前に目が覚めた。宿に自販機はないかと思って1階まで降りた。建物内にはなく、入り口の外にあった。門限のため鍵がかかっていたのをあけ、自販機で水を買った。扉を閉め、鍵をかけようとすると、締まらなかった。建て付けが悪いせいだった。扉を持ち上げるようにしてしめるとかかった。

水を飲み、1時にまた眠った。