ゴキブリ対策

 松尾スズキ『宗教が往く』読み終わる。
 1998年から4年半にわたって連載された作品とあって、物語はとんとん拍子にあっちこっちへ飛んでいく。
 その飛んでいくさまがさまになっているのは、小説のスタイルがカート・ヴォネガット風だからだろう。
 ヴォネガットは作中に平気で作者本人を登場させ、進行中の物語に意見する。
 松尾スズキも似たようなことをこの作品でやっている。
 が、二番煎じの感じがしないのは、ヴォネガットの手法をじっくりと消化して、新しい表現としてあらわしたからだろう。
 そこには、筒井康隆のテイストも少なからず混じっていると思った。
 後半になって、フクスケが迷路のようになったテレビ局を延々とさまようシーンがあるが、これなどは『脱走と追跡のサンバ』を思い出させる。
 また、フクスケ達がテレビ局に立てこもるシーンは、『俗物図鑑』のラストに似ている。
 松尾スズキのインタビューをネットで読んだところ、やはり『俗物図鑑』のセンは狙っていたようだ。
 つまり、30年前の筒井康隆と、カート・ヴォネガットが好きな読者にとっては、極めて間口の広い小説なのだ。
 大変面白かった。
 よく、まあ、書いてくれたものだと、心の底から賛嘆の拍手を送りつつページを閉じた。

 昼、35度近くまで気温が上がる。
 幡ヶ谷の洋食屋でミックスフライのランチを食べる。
 コックが一人で切り盛りしており、彼の忙しさが自分に伝搬するように感じ、メニューが出てくるまでそわそわした。

 夕方、ゴキブリ除去用のホウ酸団子を買って帰る。
 12個あったので、台所を中心にまんべんなく配置する。
 20代前半に初めて一人暮らしをした時から、ホウ酸団子系のゴキブリ除去剤を愛用している。
 初めて住んだアパートは風呂無しのだだっ広い6畳間だったが、台所スペースが3畳ついていながら、流しが小さいため、自炊するのには苦労した。
 そして、流しででかいゴキブリなんぞ見かけた時は、かなりへこたれた。
 だが、ホームセンターで安売りをしているホウ酸団子を部屋中に配置して以後は、4年間その部屋でゴキブリの姿をまったく見なかった。
 その代わり、蜘蛛が増えたけど。
 たぶん、ゴキブリと蜘蛛は、家の中においては生態系のライバルなのだろう。
 ゴキブリが減ることで蜘蛛が増え、蜘蛛が増えることでゴキブリもまた増えにくくなった。
 そんな感じだったんじゃないか。

 夜、『恋の門』をビデオで少し見直す。
 忌野清志郎が歌うシーンが一番好きだ。