昼、自転車で深沢の稽古場へ。
走り込んでいるおかげで、昨年12月に通った時より、自転車をこぐのが楽だった。
何遍行っても迷う稽古場だが、今日はほんの少し道を間違えただけで済んだ。
2時に稽古場着。
前回の稽古では時間がなく、太一が今回の再演でどういう「良き方向」に持って行こうとしているのかを、突き詰めて話し合うことができなかった。
場面を見て、駄目出しをしただけだった。
答案の採点をするようなあり方だったと思う。
家に帰り、ひとしきり考え、そのやり方で稽古に行くのは良くないことだと思った。
残り時間の少なさに自分が影響を受け、焦りを助長するような言葉を吐くのは、カーチェイス中に助手席でギャーギャー騒ぐようなものだ。
良くなっている部分を指摘して、自分なりに「良き部分」を増やしていく手助けをした方が生産的だ。
そう思い、先日その旨を太一にメールした。
太一は通しができるよう、稽古をしてきていた。
水曜の時点では無理だと言っていたのだが。
2時半から通しを見る。
導入部分から大分スムーズになっていた。
途中、色々な人物を演じ分けるシーンになると、出来不出来の差があったが、全体的に落ち着いた芝居になっていた。
気がついた箇所を指摘し、意見とアイディアを出し、5時に稽古終了。
前回よりも、良き方向に流れつつあると感じた。
稽古後、八幡山へ移動。
京王線ガード下の「ポんタ」という店に入る。
四人がけのテーブルと二人がけのテーブルが二つずつあり、四人がけの方にはおばちゃん三人組みと中年夫婦が座っていた。
二人がけのテーブルには老人が座っていた。
カウンター席は椅子が四つあった。
真ん中の一つに座り、チキンカツ定食を頼んだ。
少しして、店に女一人男二人のグループが入ってきた。
カウンターにいたマスターが、
「お兄さん、テーブルの方にどうぞ」
と言った。
老人の座っている隣の、二人がけテーブルに移動した。
中年夫婦の夫が馴れ馴れしい口調で、
「マスター、納豆ちょうだい」
と言った。
納豆?
そんなものが置いてあるのか。
少しして、おばちゃん三人組みが会計をするために席を立った。
同じタイミングで、買い物袋を下げた店のママさんが入ってきた。
ママは老人に声をかけた。
「…さんおひさしぶり」
老人は何事か返事をした。
ママはおばちゃん三人組みに話しかけ、その場にいない誰かのうわさ話を少しした。
おばちゃん達が店を出てから、マスターがチキンカツ定食を運んできた。
ご飯と、チキンカツと、サラダと、付け合わせのスパゲティと、味噌汁。
値段は600円。安い方だろう。
食べていると、スーツ姿の男が弁当箱を抱えて店に入ってきた。
「ごちそうさま。おいしかったよ。マスター、明日なんだけど」
男は明日頼む弁当を注文していた。
夫婦連れが会計のために席を立った。
夫がママに話しかけ、ママは伝票を計算しつつ、笑いながら応対していた。
チキンカツ定食を食べ終わり、
「ごちそうさま」
と言うと、マスターがこちらをみてにこりと笑い、
「ありがとうございました」
と言った。
親しげな笑顔だった。
常連しかいない店に入って食事をしたのだが、場違いな気分を味わうことがなかった。
いい店だった。
7時過ぎにワーサルシアターへ。
桃原君主宰の平熱43℃公演を見る。
タイトルは『真冬の夜の夢』
『真夏の夜の夢』をモチーフにしているというよりは、シェイクスピア作品から登場人物の名前と設定を借りて、お宝探しもののストーリーにはめ込んだような作品だった。
綾香がパックを演じ、上岡君が主人公グループの連れを演じていた。
松原由賀さんも出演していた。
前回よりアクション担当の役者が増え、見た目の印象がハードになっていた。
場面ごとに、笑わせることを意図しているであろう台詞や所作があった。
これが、劇を中断させていたように思う。
綾香のパックは動くが速かったが、軽やかというよりは筋肉を感じさせるような速さだった。
パックを演じることを楽しんでいるのがわかったが、役を演じることを楽しみだすと、その喜びがある種の「力み」として出てきてしまうのが、綾香の特長でもあり弱点でもあるかもしれない。
たぶん10年以上も彼女の芝居を見ているから、そんな風に考えてしまうのだろう。
終演後、松原さんに挨拶する。
パンフレットで所属が「その他」となっていたので、どういう団体かを聞いてみると、バンドであるとのことだった。
キーボードを担当しているそうだ。
知恵ちゃんが見に来ていた。
背の高い松原さんと知恵の身長をこっそり比較してみた。
知恵の方が少し高かった。
綾香、上岡君、知恵と話す。
「飲み禁止令が出ているんです」
動く芝居なので、楽日までは酒を飲むなと言われていたらしい。
知恵に、来週ゲキダン◎エンゲキブの稽古に行く旨を伝える。
稽古のことなどを少し話す。
10時過ぎ帰宅。
稽古と観劇と自転車で疲れていたが、夜中までOK GOのPVをネットで見て過ごした。