稽古佳境

風が強い。台風が近づいているせいらしい。
本番中に直撃だけは避けたいが、努力してどうなるというものでもない。

午前中ルーティンワーク。
起きた時から雑念が多かった。

昼、MOONBOWという代々木のバーへ。
そこは、昼休みにランチでカレーを出すらしい。
メニューはカレーしかないので、客は注文をすることもなく、カウンターに座るだけ。

店はこぢんまりとしていて、壁にはロックスターの写真が張ってあった。
ギターや、CD、DVD、ロック関連の書籍も置いてある。
店に流れているのはラジオ番組で、途中の時報を聞く限り、録音したものらしかった。
ピーター・バラカンのトークで、勉強するように洋楽を聴く。

今日のカレーは、なすと挽肉のカレーだった。
辛いのではなく、スパイスが効いているなと思わせる味。
ターメリックライスと相性がとても良い。
ここは、通わねばなるまい。
店の雰囲気と、マスターの柔らかい物腰で、気分も良かった。

仕事後、6時帰宅。
着替えて、軽く食べてから稽古場へ。

知恵ちゃんとナベさんが、唐辛子用の箱を持ってきてくれた。
にもかかわらず、唐辛子そのものを稽古場に忘れた。
持ってきても、掃除が大変だったろうが。

容量では、知恵箱の方が勝っている。
おそらく、かなりの量の唐辛子を詰め込むことが可能だ。
ナベ箱は、仕掛けが面白い。
蓋をスライドしてあけられる。

通し稽古をする。
1時間10分を切りそうだった。
だが、はやけりゃいいというもんじゃない。

今回、7人の役者それぞれと、実にたっぷりと絡むことができている。
セリフのやりとりをする時に、相手の目の奥にあるものを見るようにしている。
百合香さんとのシーンは、それをやることで思いもよらない展開に進んでいった。

芹川の役は、女々しさを極端にやってみるという方向がずれていき、ある意味、らしさを加味した役柄になった。
マグ初参加してから、芹川は毎回違う役を演じてもらっている。
数え上げると、そのバリエーションは広い。

知恵ちゃんの役は、ミステリアスに行くか、それともツッコミに行くか、探りを入れている状態。
自分ではなく、彼女のツッコミを多めにするのを、絶対的なルールにしている。
ボケ・ツッコミの問題じゃないのだが、長い目で見れば、その方がいい結果を生むと思う。

それじゃあ自分はなにかというと、出ずっぱりの役でありながら、「やりすぎない」ことに神経を使っている。
味付けを、濃いめにしない。
元から濃いのは仕方ないので、自分からさらに濃くするのは控える。

ナベさんがやる「佐々木」が、数ヶ月ぶりに帰ってくる場面。
「なんだ、そうか、帰ってきたのか、お帰り」
と、俺は言うのだけど、どら猫みたいな声を出してソファに寝っ転がる芝居をしたら、ナベさんが笑っていた。
「誰の真似なのかわかんないけど、誰かの真似っぽいんだな」
という理由。

このどら猫声を、控えめにする工夫。あるいは自制心。
それが、たぶん今回必要なことだ。

22時帰宅。
ソーセージとザワークラウト食べる。最近こればかり。

Perfumeのニューアルバムと、ドームツアーが決まった。
先頃の対バンツアーは、ものの見事にチケット抽選で外れたが、ドームならば取れるんじゃないか。
年末の楽しみがひとつできた。

やはり、出ずっぱりというのは疲れるもので、家に帰るとまぶたがけいれんする。
泣いても笑っても稽古は明日までだ。

重要なのは、今回の芝居、俺の芝居がダメダメだったら、総崩れになるということだ。
逆に言えば、俺がちゃんとやれば、相手役も、芝居も、ちゃんとなる。