森繁劇団

 今度の3月に演出することになった芝居のタイトルは「動物大集会」という。
 今週木曜から稽古が始まる。
 2週間ほど前にはもう芝居の稽古なんてしたくないと思っていたのに、むしろ今は心待ちにしている。

 最近は日本映画が観たくて仕方がない。
 主に昔の映画が観たい。
 「映画は映画館で観るべし」という考えは正しいと思うが、ものづくりのための吸収を目的とするならば必ずしも正しくはない。
 第一、映画館では一日に7本も観ることができない。
 金と時間とプログラム的に不可能だ。
 その点でビデオはありがたい。
 2000円あれば最低でも5本以上、好きな映画を吸収できる。
 サービスデイにぶち当たれば10本だ。
 時間に換算したら、およそ20時間ぶっ続けで映画を観ることができる。
 そのくらい溺れられれば、得られる物は沢山ある。

 野上照代「天気待ち」読了。
 著者は黒澤明監督の映画で長年スクリプターをつとめてきた。
 いわば、黒澤組生粋の「身内」
 そういう人が書いた本だけに、「デルス・ウザーラ」撮影秘話や「影武者」の勝新太郎降板事件の話など、凡百の評論を凌駕する面白さがあった。

 宮野琢磨「森繁座長と楽屋飯店」読了。
 楽屋に出来た「森繁飯店」にまつわる話を収録した本。
 森繁久弥の「にんげん望艶鏡」という本に、森繁劇団の思い出というエッセイが載っている。
 新米役者の薄給ぶりを哀れんで、せめて腹だけはいっぱいにしてやろうと、楽屋に「森繁飯店」を作った話だ。
 出演する役者に谷晃という玄人はだしの料理上手がいて、その人が日々の献立を仕切っていたらしい。
 他の女優も出の合間に材料を刻んだりと手伝っていたそうな。
 のどかでいい話だ。