芸術と食欲とスポーツ

 日差しが強かった。
 しかし風は涼しかった。
 東京電力のデジタル温度計には24度と表示されていた。
 昼過ぎ、根津の弥生美術館へ。
 『伊藤彦造追悼展』を見る。
 戦前の少年雑誌に連載された剣劇読み物の挿絵の数々。
 描かれた剣士達は、今にも動き出しそうだ。
 素人目にも、すごいなあと思える。

 美術館を出てから、不忍通りを谷中方面へ歩く。
 途中、アイスもなかを食べ、カフェオレを飲む。
 食べながら、飲みながらの歩き。

 日暮里駅近くの猫ゾーンで小休止し、猫の写真をいくつか撮る。
 ここいらの猫は、通りかかる人々に撫でられるのが当たり前らしい。
 あごの下をかかれても、寝てるからオレはゴロゴロしない。
 そういうポリシーを感じる。
 写真? 撮るなら撮りなよ、みたいな。
 しかし、子どもだけは苦手らしい。

 山手線池袋周りで渋谷へ。
 パラドックス定数『38℃』観る。
 死人が出てしまったらしい薬害事故に関わる、製薬会社側の人間と病院側の人間による討論が繰り返される。
 1時間30分息をつく間もない展開だが、観客をも当事者サイドに巻き込む演出効果があるため、観ていてしんどかった。
 このしんどさは、観客としてのしんどさとは違う。

 たとえるなら。
 マクドナルドでてりやきマックバーガーを食べていたら、いきなり覆面姿で銃を持った男達が乱入してきた。
 「俺らはマクドナルドに恨みがある。逃げようとした奴は急所を外して撃ち、ゆっくり殺す」
 とか言って、店員を人質に立てこもる構えだ。
 店員さんも大変だなあと思いながら店を出ようとしたら、犯人の一人が銃をこちらに向け、
 「てりやきマック食ってたお前もだ」
 と言われ、警官突入犯人逮捕までの数時間、関係者としてその場で緊張感を味わったあとのしんどさに似ている。

 観客は限りなく当事者に近づいていたのだ。
 だからといってこちらから台詞を投げることは許されない。
 我々は当事者であるが、幽霊でもある。

 8時帰宅。
 しつこく、もつ鍋を作って食べる。
 昨日の夜、相撲部屋の公式サイトを見て回ったら、ちゃんこレシピのコンテンツがあるサイトがけっこうあったのでうれしかった。
 九重部屋は、レシピにとどまらず、通信販売までしていた。
 でも、貴乃花部屋には、そんなコンテンツはなかった。

 阪神がまた勝った。
 中日が負けたので、ゲーム差は3に縮まった。
 去年、追いすがってくる中日に不気味さを感じた阪神ファンは多かったが、今年は中日ファンが逆の立場だ。
 29日からの直接対決が、これで最高に盛り上がる。

 『同時代ゲーム』読み終わる。
 はじめはちっとも判らなかったが、村=国家=小宇宙が大日本帝国と戦争をする中盤からどんどん面白くなった。

 筒井康隆『驚愕の曠野』読む。
 短いのですぐに読了。