うつろう時の旅人

風俗店でボーイの仕事をすることになった。
先輩が二人いた。
一人はスキンヘッドで固太り、もう一人はパンチパーマで髭を生やし、背が高かった。
店は吹き抜けになっているビルの地下一階にあった。
吹き抜けは円形で、地下一階に噴水があった。
スキンヘッドとパンチパーマはオレを探していた。
ヤキを入れるためということがわかったので、オレは噴水の反対側に隠れ、どうやったら上の階に上がれるかを、自転車に乗りながら考えていた。
やがて自転車は橋の上に来た。
大きい川だった。
ペダルが重かった。
向こう岸に渡って右に曲がり、川岸沿いに止めてあるバイクに乗り換え、高校に向かった。
二学期の国語の単位を取れておらず、三学期にきちんと出席しなければ、過去の卒業が取り消しになる恐れがあった。
高校に着いた時、時刻は9時40分だった。
国語は一限で、間に合わないのは明らかだった。
二限に出るのはやめ、武蔵小金井の南口にある小さな坂道を下り、お好み焼き屋に入った。
すぐに出て、後輩を探しながら、以前済んでいたアパートに向かうが、後輩はいなかった。
部室に行ってみようと思い、中学校の裏門から校舎に入り、隣の棟に移動すると、スーパー銭湯の脱衣所になっていた。
スリッパが沢山あり、体育会系の人間が浴室に沢山いる気配を感じた。
脱衣所の上の階に部室があったが、部屋には誰もいなかった。
下に降り、牧場を背にしてバス通りまで歩く。
バスは、江戸川区の南に行くらしかった。
途中の「高校前」で降りれば、実家に歩いて帰れるなと思ったが、降りてからそのまま南に向かい、海に面して建つ巨大なショッピングモールに入った。
が、中を通り抜けるより、建物に沿って歩いた方が早く海に行けると判断し、外の車道を歩いた。
途中、浦安の運河があり、背後に東西線が走るのを感じた。
釣具屋で竿とルアーを買い河口に向かった。
早く釣りがしたくて仕方がなかった。
だが、川に降りる階段がなかなか見つからず、釣具屋に戻った。
浦安は1983年の浦安だった。
マクドナルドがその辺にあるなあと思ったのだが、見えたわけではなかった。
浦安駅も見たわけではなく、そこは浦安なんだと感じただけだった。

そしてオレは2016年10月10日の7時に起きた。
ゼリーを食べ、膨れた腹を押さえ、また寝て、12時に起きた。
「SEN YO」へ久しぶりに行き、豚肉と野菜を炒め、酢で味付けた料理でご飯を食べた。
カウンターに夫婦と三歳くらいの娘の三人連れがいた。
母親がトイレに立つと、娘が激しく泣き始めた。
母親が戻ってきてからも、娘は予告なしにいなくなった母親への不満と、なし崩しにしようとした父親への弾劾を、泣き声で表現していた。
奥のテーブル席には別の家族連れがいた。
夫婦と、幼稚園くらいの兄妹だった。
ゆっくりと食事をしていた。
入り口に目を転じると、行列の一番前にいる若いカップルがスマホを見ていた。
その後ろにはさらに8人ほど並んでいた。

店を出て、青梅街道沿いの自転車屋でタイヤに空気を入れた。
3時前に帰宅し、そのまま寝台に倒れ込み、7時まで寝た。

起きて、11時まで台本を書いた。
寝ている時、夢うつつのまま浮かんだ言葉を、タイトルにすることにした。

マグネシウムリボン12月公演のタイトルは、
「うつろう時の旅人」
と決まった。