仕込みライダー

 朝から仕込みである。中野スタジオあくとれ。
 しかし大掛かりな装置はないので、パンチを張って幕を吊ったら、後は細かい作業が残るのみとなった。
 俺はオギノ式に頼まれてお使い係。わっちゃんのバイクを借りた。
 「風になってください」とオギノ式。

 ボックスに張る色紙を買うために、横岳を後ろに載せて新宿の世界堂へ行く。
 横岳は怖がってヒーヒー言っていたが、俺は久しぶりのバイクが心地良かった。

 劇場に戻ると、わっちゃんが、
 「ドカさん知ってますか。この劇場の上にある会社、どうやらAV制作会社らしいですぜ」
 劇場は地下一階なので、つまりは一階の事務所のことらしい。
 わっちゃんは続ける。
 「上に沢山のごみ袋があったでしょ。ビデオテープですぜ。今日は大掃除らしいっすね」
 「本当かい。確認しよう。今すぐに確認しよう。わっちゃん、早く上に。すぐ上に!」
 二人はまるで天馬のように階段を駈けあがった。
 しかし、ごみ袋はすべて回収されてしまっていた。

 夕方、小道具を借りに行くみつ夫を幡ヶ谷まで乗せて行く。
 途中、頭痛。
 何しろヘルメットはわっちゃんのものだから、頭のサイズが63センチの俺には小さすぎた。
 こめかみに鈍い痛みが走り、幡ヶ谷に着いた時にはめまいがした。

 中野に戻るとすっかり日が沈み、仕込みのほうもひと段落ついていた。しかし今日は運転ばかりで仕込みをした気がしない。
 まあ、バイクを運転できただけでもいいが。

 夜は場当たり。時間はどんどん過ぎていく。
 あっという間に退出時間。寒い中皆さんお疲れ様でした。

 帰りの電車でみつ夫に、悩み事を色々打ち明けられる。
 青春の蹉跌。

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