本番中の癖

 仕事が身に入らないのは、本番を迎えているから仕方がない。
 が、残業が出来ないために、地味に仕事が増えていくのは、結構ストレスになる。
 俺のデスクには、未決の書類が万里の長城を築きつつある。

 仕事後、劇場入り。
 本番になると、一人になって集中力を高めていく癖がある。
 今日もその伝で、一人袖の暗がりで台詞をぶつぶつ言っていたら、伊原さんが顔を覗かして、
 「ドカ君、元気?」
 と、聞いてきた。
 「元気ですよ。俺、本番前はいつも一人になりたがるんです」
 「あ、そう。あははは」
 気を遣ってくれたのだろう。あり難いことだ。

 片桐が観にきた。
 装置の仕掛けについて、大いなる感銘を受けたらしい。
 「裏、見させてくれないかな」
 「いいんじゃないですか?」
 米倉さんが案内していた。

 終演後、さくら水産にて飲む。
 オギノ君はなんと、12時からガソリンスタンドで仕事。
 「朝の8時までですよ」
 とのこと。

 片桐と、マグネシウムリボンの前回公演についていろいろ話す。
 実際、前回公演に関しては、各方面から反省点が出てくる。
 桟敷童子が終わったら、色々な意味でのリニューアルが必要だ。