昨日の夜は小津安二郎「小早川家の秋」を見た。
先月NHKのBSで放送していたのをビデオにとっておいたのだ。
この作品は松竹ではなく東宝宝塚映画製作で、レンタルビデオ屋においてあることはほとんどない。
いつもの松竹作品俳優ではなく、森繁久彌をはじめとした東宝の俳優が中心の映画なので、以前から見たいと思っていたのだ。
森繁さんは期待したほど良くなかった。
小津さんは森繁さんのアドリブぐせを嫌っていた。
だから、役者としての扱いは大きくても、監督に愛されていないのが画面を通してわかってしまう。
これは役者として辛い。
当時森繁さんは五十代の前半だったろうか。
芝居に対して熱かった
一方、大映から客演した中村雁治郎は大いに本領を発揮していた。
造り酒屋のご隠居の役で、焼けぼっくいに火がついた形で昔の女の家に入り浸る。
助平さと愛嬌が同時に見え、見事だった。
山茶花究、小林桂樹、加東大介が脇を固めていた。
豪華な布陣だ。
司葉子、原節子、新珠三千代など、女優はみんな美人だ。
もしこの3人と俺を残して世界が滅亡しても、それもまたよし、と思ってしまうほどだった。
明けて今日の夕方。
王子小劇場の松本さんから誘われていた舞台美術のワークショップに行った。
王子小劇場の劇場部分のみならず、ロビー、階段、トイレ、キャットウォーク、オペレーター室、倉庫、事務所など、あらゆる空間のどれかを利用して舞台を作るという内容だった。
講師は松本さんが所属する舞台美術集団「突貫屋」の主宰、杉山至さん。
画用紙を使って、劇場内の気に入った空間をデッサンすることから始まり、その空間を参加者同士で見せ合った。
舞台美術志望者より、演出家や役者の参加者が多かった。
デッサンした空間の似通った人でチームが分けられ、演出家チームに配属された。
杉山さんが指定したプロットで一つのシーンを作るのだが、これがなかなか難しかった。
与えられたテーマは「家族の崩壊と再生」だったが、舞台美術での表現を考える前にテーマに拘泥した話し合いになるところが、演出家チームの特徴だったと思う。
一時はどうなることかと思ったシーン作りだが、やってみるとどうにかなるもので、単純に楽しんでしまった。
舞台に立つとはしゃぐ癖は、そろそろ直さないといけない。
もういい年だし。
「わーい」というテンションは威厳を損ねる。
せいぜい「結構結構」くらいにしておくべきだろう。
4つのチームはそれぞれ工夫を凝らしてシーンを作った。
劇場内のどの空間を使ってもよしとしたことで、発想が自由になったのかもしれない。
ワークショップ終了後簡単な飲み会があったので、居残って参加者と会話した。
杉山さんに挨拶し、クロカミショウネンの野坂さん、べっちんの東島さん、王子小劇場の松本さん、玉山さんなどと話す。
12時近くに辞去し、東島さんと一緒に帰った。
1時過ぎ帰宅。
飲んでいる時はそうでもなかったが、歩くことでアルコールが全身を駆け巡るのはいつものことだ。
酔生夢死。