舞台美術のタタキが始まった。
松本さんの手伝いをするため、相模大野へ行く。
床材の切り出し作業をする。
斜め置きの旋盤みたいな電ノコで、床材を切り出していく。
単調な作業をしながら思い出すことは、学生時代、厚ベニをのこぎりで切っていた時の苦労だ。
うんざりするほど時間がかかり、気分は囚人だった。
さらに一年の時は演劇サークルの部員は極端に少なかったため、人海戦術ではなく牛歩戦術になってしまった。
もしあの頃、部会で、
「舞台装置作りのための電ノコを買おう」
と誰かが発言したらどうなっていただろうか?
「それなら照明の調光卓を買おう」
「音響のスピーカーを」
「衣装のミシンを」
そうなっていたかもしれない。
予算配分は難しいということだ。
昼過ぎ、松本さんにハンバーグのレストランに連れて行かれた。
「ここは変な店なんですよ。外見と中身の印象が違うんです」
中はかなり薄暗く、トイレはなぜか2階にあった。
むしろ2階はトイレだけがアパートの個室みたいに並んでいるだけだった。
ハンバーグとチキンソテーを頼む。
ボリュームはなかなかで、料金も手頃だった。
それなのに客が全くいなかった。
都内にある劇場の話しなどしてから再び作業に戻る。
終了時間まで切り出した材のやすりがけをした。
夕方、南中野へ。
中盤と後半の稽古。
動きではなく、役の内面を考えながら話し合う。
動きをつけるより頭を使う。
夜11時過ぎ帰宅。