今は秋だったのか

 昼過ぎから撮影の予定だったが、雨天中止とのことだった。
 昨夜から降り始めた雨はやむことなく今朝はどしゃ降りだったので、撮影は中止だと思い込んでいたところ、昼前に石川君から電話があった。
 「1時間遅れの2時40分にお願いします」
 急いで着替え、東横線の学芸大学駅に行く。

 カメラマンの佐藤さんのマンションでゴミを捨てるシーンを撮る。
 次に手を洗うシーンを撮った。
 次のシーンに移る時は基本的に待ち時間があり、その間はボーっとしていた。
 山崎が出演するため話相手はいるのだけど、べらべら喋る気にはなれなかったので基本的にはじっと待っていた。

 夕方、室内のシーンを撮る。
 食事をしながらのシーン。
 撮る合間に山崎と話していと、
 「そっちの方が自然だね」
 とカメラの佐藤さんに言われた。
 そういうものだ。

 7時になり先に上がる。
 学芸大学駅から小金井まではおよそ1時間かかる。
 うちに帰って昨日失敗したローストビーフでサンドイッチを作って食べた。

 雨のせいか夜になると随分寒かった。
 吐く息が白くなるほどではないが、あと3週間もすればそうなってくるかもしれない。

 今年は春、夏と芝居があり、秋から冬にかけては予定がない。
 色々なジャンルの色々なものを見に行けるチャンスということだ。
 友人知人を増やしたい。
 例えば芝居を見に行って知り合いに会えると、それだけで少し得をした気分になるもんだ。
 知り合いが多ければ、相対的に敵が減る。
 フォローにまわる人がいる可能性が高まるからだろう。

 今の自分には友人の数が一桁足りないのだと思う。
 協調性と迎合を混同してきたからだろう。意地維持だ。
 だがまだ自分の中に、角の取れない部分があるのを感じる。
 寒くなりしんとした夜に、ふとそうしたことを考えてしまう。
 そういえば、今は秋だったか。
 忘れていた。