たのきん映画

降ると言われた雪は確かに降った。
積もると言われたとおり積もった。
だが、都内の交通を麻痺させるほどの大雪にはならなかった。
昼過ぎにはあらかた溶け、道路わきにのけられた雪の量もそれほど多くなかった。
口ほどにもねえ、といった感じだ。

温暖化の影響がなければ、たぶん今年の東京はもっと雪が多いはずだ。
60年代の東京は、もっと雪が多かったらしい。
そして、もっと寒かったらしい。

夕方、珍しくマックで夕食。
ドナルド・リチー『黒澤明の映画』読了。
『夢』『八月の狂詩曲』への評価が辛らつなのが意外だった。

『野良犬』を見る。
1949年当時のリアリティを充分に感じるが、一ヶ所だけ浮いているシーンがある。
淡路恵子がドレスを着てくるくる回りながら、
「素晴らしいわ!とっても楽しいわ!まるで夢みたい!」
と叫ぶところだ。
こういう演出は、やっている当時はその時代錯誤ぶりがわからないものだ。
北野武『座頭市』のタップダンスシーンも、20年後くらいには時代錯誤の印象をあたえるのではないか。

時代錯誤ぶりの際立った演出といえば、かつての<たのきん映画>がすごかった。
小学生の頃、夏休みと正月に東宝系で公開されていて、なぜかよく見に行った。
たぶん今見たら、とても笑えるだろう。

小5の時に見た『ブルージーンズメモリー』はマッチが主演。
つぶれかけたホテルを建て直すためにコンサートをやる話。
ところがホテルの子供か誰かが海へびに噛まれて、その血清を取りに行こうにも海は嵐で、マッチは泳いで届けようとする。
トシちゃんとヨッちゃんは、まるでマッチが死んだかのようにコンサートを始めるのだけど、マッチは戻ってきて主題歌の『ブルージーンズメモリー』を歌って盛り上がって終わり。

『ジェミニYとS』はもっとすさまじい設定がある。
トシちゃんは二役。
一人は日本人の青年。
もう一人はなんと、日本人とオーストリア人のハーフで、青年の弟という設定。
トシちゃんが片言の日本語を使うシーンなど、たぶん今見たら涙が出るのではないか。