朝10時に劇場入り。
昨日やったところから返す前に、照明の立ち位置確認をする。
シーンの立ち位置を尾池さんが確認するいとまもなく、猛スピードで場面転換の確認をやってしまったためだ。
一番ややこしい、学校のシーンを中心に返す。
2時からゲネ。
スチール撮影の鏡田君来る。
自分が出演するところ以外はすべて客席から見る。
役者の演技に変化はない。
照明がどう当たっているか。
音響がどう聞こえているか。
舞台転換はどう見えるか。
それだけに注意を払う。
上演時間は2時間4分だった。
椅子の転換に時間がかかったのと、芝居の間がたっぷりとられていたのが原因かもしれない。
もう一度、照明のために役者の立ち位置確認をし、本番の準備に取りかかる。
7時半開演。
全体的に芝居のテンポが速かった。
間を置くのを恐れるかのような早口ぶりだった。
終演後日高さんが、
「上演時間は2時間ジャスト」
と言った。
ゲネから4分も縮まった。だが、早口になっただけという印象がある。
お客さんの反応は会場の隅々から忍び笑いが聞こえるといった感じ。
大爆笑するような芝居ではないので、その点は良かった。
ただ、稽古場で作った鶴マミとノブ君のシーンだけ、なぜか大爆笑となっていた。
終演後、劇場を退出するまでわずか30分しかなく、その間にお客さんとの面会や送り迎えを済ませ、メイクを落とし衣装を着替えなければならない。
さすがにあわただしい。
初日祝いを近所の居酒屋でする。
美術の松本さん、直美、須藤さんのテーブルに座る。
とにもかくにも、大きなミスなしに初日を終えられて良かった。
終電組が続々と帰ったあと、眠ってしまった松本さん、受付を手伝ってくれた中山君、そして片桐と残りの酒をちびちび飲む。
「お客さんが入ってくれて良かった」
と中山君。
「松本さんは帰れるんですか」
「片桐は自転車?」
「ぼく歩きですよ」
「中山君も?」
「歩きますよ」
松本さんは昨日から徹夜作業が続いており、ビール1杯でダウンしてしまったのだ。
「松本さん、家が桜新町だよ」
「どこですか?」
「田園都市線の、用賀の手前あたり」
「じゃあ無理ですね」
と片桐は言った。
「そこでお前はそそくさと帰るんだよ。そこがお前のいけないとこなんだよ」
中山君が突然だめ出しをした。
こういうテンションの時の中山君と、そういえば同じ席で飲んだことがない。
いつも、テーブル越しに背中で聞いている。
結局、閉店と言うことで店の人に追い出される。
松本さんは目をしょぼしょぼさせ、
「ふむ…帰れん…」
とつぶやいた。