方向音痴ブルース

和田で稽古。
薄曇りで薄寒い。

ここの稽古場はOXカンパニーに客演した3年前に来たことがある。
住宅街に囲まれているため、道に迷いやすい。
案の定、直美と健ちゃんが道に迷った。

健ちゃんは名うての方向音痴である。
7年前だったか、武蔵小金井から南へ1キロ弱歩いた場所で稽古した時、彼は北へ2キロほど歩いたところで電話をしてきた。
時間になっても現れない彼から電話がかかってきた。
「もしもし健ちゃん?」
「あのさ、川を渡るって言ったよね」
「そう、橋を渡ると道が二股に分かれてるから、左側の道を行くんだよ」
「あのさ、道、ずっとまっすぐなんですけど」
「えっ?」
「何メートルくらいいくと二股?」
「ちょっと待ってよ、今どこにいるのさ」
「川」
「川って…なに川?」
「玉川上水って書いてある」
その瞬間、彼が北と南を間違えたことを知った。

『ラジコン少年』の本番中もこんなことがあった。
初日飲みをすることになったが、俺と松本さんは劇場を少し遅れて出た。
先に劇場を出た健ちゃんから、電話で店の場所を聞いた。
「…の角を曲がって、まっすぐ行って…の先の2階」
うんわかった今から行くよと答え、指示通りに歩いてみた。
ところが、角がどこにあるのか、まっすぐはどの方向に向かってなのか、どの先の2階なのかがわからない。
歩くうちに突然思い出した。
「やばい!松本さん、健ちゃんは方向音痴ですよ!」
「はあ」
「このままじゃ我々は永久に店にたどり着けないかも知れませんよ!」
背筋が凍り付いた。
その矢先、誰だったか忘れたが芝居の出演者が通りかかり、その人にナビゲーションしてもらうことで店にたどり着くことができた。
店の前についてほっとしていると、我々の来た逆の方向から健ちゃんが歩いてきた。
「ああ、ここかあ」
道に迷っていたらしい。

そんな、方向音痴エピソードを思い出していると、ようやく健ちゃん「すんません…」と小さくなりながら到着した。
同じく迷っていた直美は、その少し前に到着していた。
彼女の方向音痴は、まだまだ甘いと言うことか。

新しく渡したシーンを稽古する。
主に久保田君が中心。
短い間に台詞をよく覚えて来ていた。
彼にとっては客演しまくりの1年だったが、良い締めくくりになってくれたらいいなと思う。

全体休憩を挟まず、出番のない人にシフト制で休憩をとってもらう。

鶴マミと直美のシーンを作る。
10月に話した時、役の視線で世界をみられるような体験をしてみたいと直美は言っていた。
そのことがあったからというわけではないが、今までよりも前へ出る姿勢が見える。
はじける寸前のたぎりみたいなものが、身体に感じられる。
鶴マミの役は前回とは180度違い、等身大の大人の女性。
そういえば鶴マミにそういう役をやってもらうのは、初めてかもしれない。

吉田さんは前半に長いシーンがある。
「ねえ、(もしも長くなるなら)俺の(台詞)カットしていいよ」
と言っていたが、一人芝居的なことをする場合に必要な技に関して全員を見ると、やはり吉田さんが頭いくつ分か抜けている。
「落語の味わいですね」
と少し前に表したが、長い台詞を飽きさせない工夫が散りばめられているので、こちらとしては大いに助かる。
工夫=技術というわけではないが、あとは要らないものが自然に削がれていけばいい感じになりそう。

9時に稽古終了。
東高円寺で飲む。
つき合った相手にふられることと、逆にふることについての会話があった。
人は見かけによらないものだ、と、謎めいたことでも書いておくか。

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