燃えるのを体で感じる

ファスティング三日目、とうとう気力体力が尽き果てた。
その代わりに体の中はすっかり空っぽになった。

ファスティング、つまり断食に初めて興味を持ったのは、水道橋博士さんのブログを読んでから。
もうずいぶん昔の話だ。
アントニオ猪木が当時さかんに進めていて、プロレスラーの高山義廣や、K-1の佐竹雅昭などもやっていた。

同じ頃、全然別の方面から、腸内洗浄にも興味を持ち、セットを買ったこともあった。

ファスティングにせよ腸内洗浄にせよ、悪い物を体から出すという部分では共通している。
そして実際の効果より、精神面に与える影響の方が、自分には強かった。

とにかく、今日も稽古。
午前中はフラフラして眠かったが、稽古で台詞を読むとエネルギーが循環するのを感じる。
(あ、今、体の中でエネルギー燃やしてるな)
という微細な感覚がある。

関係ない話だが、二十代の頃、青果市場でバイトしていた。
朝の5時半から11時半まで働くのだが、重い物を運ぶのは前半だった。
卸売りセンターの2階にある仕出し弁当屋に食材を届けるのが最初の仕事。
巨大な台車に野菜の箱を100キロ以上乗せて、車が使うスロープの端を押して運ぶ。
朝一番の仕事が一日で一番の力仕事だったから、朝飯を食べ損なった日などは大変だった。
スロープで転んだりしたら、タマネギ、ジャガイモ、キャベツ、にんじんなどの重量系段ボールが台車ごと1階まで滑り落ちて、下手をしたら大事故だ。
朝飯を食い損なったある日、死ぬ思いで弁当屋への運びを終え、社長のトラックからの段ボール荷下ろしを終え、ほっと一息入れるために自販機でデカビタを買って飲んだ。
飲んだそばから体が温まるのがわかった。

体でエネルギーが燃えるのを感じるためには、体をそういう状態に持って行かないとダメなんだろう。

また関係ない話だが、学生時代に芝居のため学校に泊まり込み、ついに金が尽きて、朝から夜まで飯抜きで過ごしたことがあった。
稽古の後実家に帰ろうと思い、
「今日帰るから」
と電話をしておいた。
夜中の12時過ぎに帰宅すると、カレイの煮付けが鍋にあり、ご飯が保温状態になっていた。
温めて、それを食べた時は、ぽろっと涙が出た。

全員そろっている時になるべく「作家」をやる。
20分弱の作品になった。
「ファミリーアフェア」でやったことを、難しい理屈抜きにしたもの。
昔から、作者と登場人物の争いというプロットが好きで、今回は全体の締めとしてもふさわしい感じになりそうだ。

「友情」「献血」「車内」「張込」は、ゆるーくつながっているのだけど、そこから「作家」をやる前に「喪失」をやる。
「喪失」を、台本を演じられなくて困る役者の芝居、と見ることも出来るので、自分の書かれ方に不満を持つ登場人物と作者の芝居が続くのは、段階を踏んでいるようだ。

稽古後、千陽さんにご飯に誘われる。
ファスティング最終日でもあったので、軽くつまもうかと、荻窪へ。
餃子やチャーハンなど、ほんの少しを、よく噛んで食べると、体の中心でエネルギーが燃え出すのを感じた。

11時半帰宅。