朝を迎えた朝青龍

朝青龍が久し振りに優勝した。

夕方買い物をして帰宅すると、丁度千秋楽の横綱対決をやっていた。
白鵬が寄り切ろうとするところを、朝青龍が腰をひねって後ろに投げた。
通算22回目の優勝で、貴乃花に並んだという。

良くも悪くも、朝青龍が優勝すると盛り上がる。
ファンは喜び、アンチはこん畜生と思う。

白鵬は人気あるのだろうか?

個人的な見解だが、オレは白鵬の目が好きではない。
怖い。
幼い頃から殺人のテクニックばかり学んできた男のように見える。

たとえば朝青龍と白鵬とオレがある組織の一員だったとする。
出来心で組織の金に手をつけてしまったオレに、二人はどう対応するだろう。

朝青龍は怒りまくり、粘土になるくらいぶん殴るだろう。
でも泣いて土下座したら、命は助けてくれるような気がする。

白鵬はどうだろう。
顔色一つ変えずに引き金をひくような気がする。

筒井康隆の短編に「走る取的」というのがある。
飲み屋で目が合い、ちょっと睨んだだけでどこまでも追いかけてくる取的の話だ。
白鵬の怖さは、この取的に通じるものがある。

蹴った空き缶が白鵬の頭にコーンと当たったらどうしよう。
一緒にエレベーターに乗って閉じこめられたらどうしよう。
白鵬怖いよ。

夜、鍋物を作る。
野菜を沢山とる。

ネットでジュリーの動画検索をする。
Youtubeに沢山アップされていた。

長谷川和彦がジュリーのツアーバスに乗って対談する映像があった。
『太陽を盗んだ男』撮影以前と思われる。
ゴジはコップ酒片手であった。

演出を生業とする者は、役者の<成り立ち>がとかく気になる。
言葉にすれば、
「おまえは一体、何なんだ?」
ということである。

コップ酒片手のゴジさんの目がキラキラしていた。
飲みながら何度も、
(沢田、おまえは一体何なんだ?)
と、心の中で問いかけていたのだろう。

『太陽を盗んだ男』でジュリーを主演に据えて以来29年、長谷川和彦監督は映画を撮っていない。
そういう人生はどういう気持ちがするだろう。
最悪か?
それとも、一瞬の輝きを誇りにしているか?

人事ではない。
やらねば、な。