昼小屋入り。
場当たりの残りをしてからゲネプロ。
芝居が始まってから登場までの待ち時間はおよそ50分強だった。
大きなトラブルなくゲネは終了。
簡単に食事をとり、本番を待つことに。
初日からしばらく舞台がなじむまでは、本番前に芝居の台詞以外の言葉は口にしたくないので、いつもは舞台袖の暗がりにじっとしている。
今回はそれができないので困っていたが、上の楽屋前の廊下に、避難用階段の入り口があり、暗幕で閉ざされていた。
そこに入って待機する。
暗がりに身をひそめるといっても、別に集中しているわけじゃない。
喋らないでそこにいるだけだ。
だが喋らない状態に身を置くというのは重要で、出番が来て台詞を喋ると、喋れることが嬉しくなる。
自分の出番が来た。
演出の小林君演じる<生田目>に案内されて、アジトにやってくるシーン。
序盤でこちらの台詞と彼の返事が重なる。
「(台詞)かぶせないで」
という彼のアドリブが出る。
それじゃあ俺が間違えたみたいじゃないかと思いながら台詞を続けるが、今度は「長谷川も味が出てきた」という台詞を言ってこない。
しまいには、
「お前はなにしにきたんだよ!」
という、次のシーンの台詞を逆ギレ気味に言い放つ。
まずいなと思い、
「まあ、長谷川も味が・・・」
と彼の台詞を代わりに言おうとしたが、
「長谷川の話はどうでもいいんだよ!」
と言われ、もはやこれまでと思い、次のシーンへのつなぎとなる、
「いくらで買うつもりだ?」
という台詞につなげた。
見た人はなにがなんだかわからなかったろう。
全員が出てきてからしばらくは、落ち着いて台詞を言うことのみに神経を集中させた。
次の出番では、慎ちゃん演じる仲間の詐欺師に帽子を深くかぶせられるところで、帽子が頭から脱げ落ちてしまい、拾って裏返しにかぶりなおしてしまったことに、しばらくしてから気づく。
のんびりしたシーンではなかったのでかぶり直すことができず、台詞のない間逡巡し、このままいった方がいいと判断する。
カーテンコールを終えて楽屋に戻ると、小林君が、
「塚本さんごめんなさい」
と謝ってきた。
まあ仕方ないと返事をする。
実際、終わってしまった以上仕方ない。
自分にも甘さがあったのだろう。
びん太さん、濱ちゃん見に来てくれた。
神妙に応対する。
10時から初日打ち上げ。
スタッフさんによると、小林君ではなく俺がミスったように見えたそうだ。
そういう初日を迎えられた方が、逆に燃えてくるものだ。
12時帰宅。