プロペラと共に

朝7時半起き。
着替えてジョギング。
西荻から環八をまわるコース。およそ5K。
短いが、朝はこのくらいでいいだろう。

シャワーを浴び、JRで三鷹へ。
朝日町行きバスに乗り、竜源寺で降りる。
住宅地を南に5分ほど歩くと、調布飛行場の入り口に着いた。

こぢんまりとした新中央航空の建物に入り、荷物を預ける。
ロビーは病院の待合室に似ていた。
新島行きの飛行機が飛ぶ様子を眺めて過ごす。

11時前に大島行きの肉声アナウンスがあった。
名前を呼ばれた順に並び、金属探知機をかけてもらってから飛行場内に入る。
プロペラ機の中は2列で小さい通路が真ん中にあった。

空港の端からスピードを上げて離陸する。
早い車に乗っているようだった。
突然浮かび上がり、座席が斜め上を向く。
坂を登っているのとは違う。
飛んでいるとしか言いようのない感覚だ。
小さい飛行機ならではかもしれない。

上昇を続ける間、機は大いに揺れた。
後ろに座っていた20代らしき女の子が騒いでいた。

水平飛行に入ってから下を見ると、よみうりランドのプールが見えた。
カメラを出してスイッチを入れ、撮ろうと思った時には通り過ぎていた。

遠くに目を転じると横浜港が見えた。

やがて真下に保土ヶ谷インターチェンジが見え、

鶴岡八幡宮が見え、

由比ヶ浜が見え、

あとは海が続く。

海に飽きる暇もなく大島が見え、

島がみるみるうちに大きくなったかと思うと着陸していた。
25分で本当に着いてしまうのだ。

空港を出てレンタカーの料金を払う。
近くに牧場があったのでそこへ行き、ぷらっとハウスという売店で濃厚なソフトクリームを食べる。

元町へ移動し車を停め、寿司光という店で海鮮丼を食べる。
刺身がうまい。

お茶を飲んで落ち着いた後、車で三原山山頂に向かう。
思っていたより傾斜がきつく、どんどん高いところへ登っていく感じがした。
山頂入口のパーキングに停め、そこから徒歩で火口を目指すのだ。

溶岩の広がる地形で、高い木は生えていない。
日を遮る影のない不毛の荒野だ。
途中、ガス噴出時のエスケープトンネルがあった。

山頂から火口を覗く。
内側は赤茶けた岩が露出している。
その周囲は、溶岩の流れがそのまま固まった黒と、間に生える植物の緑が広がる。

来た道を引き返し、茶屋でクリームあんみつを食べる。
水が大変美味しかった。

車に戻り山を下り、巨大な桜の古木を見る。
昔は船から見えるほど咲き誇っていたらしい。

麓を迂回して、裏砂漠への道を上る。
新しくできたルートらしく、車幅が大変狭かった。

裏砂漠入り口に車を停め、舗装されていない道を上る。
5分ほど歩くと突然視界が開けた。

おおー、としか言えない眺めだった。

尾根を山頂に向かって歩く。
風が流れるとたちまち雲ができる。

雲に向かって走ってみた。

死せる孔明に走らされた思いがした。

呆然と裏砂漠を歩く。
昭和20年代、航空業の黎明期、そのあたりに追突した飛行機があったらしい。

車に戻り、再び山を下りる。
周遊道路で波浮港を目指すが、通り過ぎてしまったので、筆島を見に行くことにした。
そのあたりは島の東側で、午後4時を過ぎると薄暗く、人っ子一人いなかった。

車に乗り、山の中腹にあるホテルにチェックインする。
汗を流すために軽く風呂に入り、食事をいただく。
名物の椿フォンデュをいただく。
テーブルの上で暖めた椿油で、串に刺さった様々な食材を揚げて食べるというもの。
明日葉の天ぷらがおいしかった。

部屋に戻り、再び風呂へ。
露天風呂に入る。
月が出ていて星があまり見えなかったが、三原山のシルエットが目の前に見え、湯治に来た戦国武将のような気分になった。

自販機でビールとつまみを買い、部屋で飲んだ。
一日かけて、大島の<山部分>を堪能した。
明日は<海部分>を堪能する予定。
海水浴場を調べ、ルートを研究し、本日撮った写真を検証し、まったく電波の入らないスマートフォンに舌打ちし、疲れと二人三脚するように床についた。