魚信

10時起き。
昨夜寝る前に作ったチャーハンを温めて食べる。
外は雨から晴れへ。

夕方まで、ネットで荒川河口のシーバス情報を調べる。
どのルアーがいいのかなど。
昔はよく釣りをしたが、今はただの素人なので、なにもかもわからない。
とりあえずロッドやリールは実家にある安物を引き続き使うことに決める。

夕方、高円寺の上州屋へ。
先日、第一投目でいきなりバイブレーションのルアーを根掛りで失った。
色々迷い、またもバイブレーションを購入。

7時半に実家へ。
ロールキャベツを食べる。
自分で作ったことのない、実家の味だ。

干満表によると、夜中の12時過ぎに干潮となり、満潮は明日の朝7時過ぎだった。
夜の3時頃に川へ行くことに決め、風呂に入り、リールの糸を交換し、仮眠を取った。

2時半に起き、支度をして外へ。
実家マンションそばのとんこつラーメン屋で腹ごしらえをし、荒川河口へ。

テトラポットの間を通りぬけ、臨海公園方面に歩く。
真っ暗だった。
水面がざわついている感じがあった。
バイブレーションを投げると、第一投目で根がかりしてしまった。
基本的に使い方が間違っているんだろう。

気を撮り直し、フローティングのルアーに付け替える。
魚はあちこちで跳ねているが、一向に当たりは来ない。

4時過ぎまでその辺りでキャスティングをし、橋の下へ移動した。
100メートル離れたところに別のアングラーがいた。
彼も釣れていないようだった。

しばらくすると空がほんの少し明るくなってきた。
同時に始発電車が走り始め、その騒音から逃れるように再び河口方面へ少し移動した。

潮は堤防最下部まで満ちていたが、まだ浸水はしていなかった。
ルアーを投げて引く。
竿が急に重くなった。
釣れないことが当たり前という気分でいたので、それが何の重さだかわからなかった。
リールを巻くと、川面を魚がジャンプした。
かかったのだ。
慌ててリールを巻こうとした途端、バレてしまった。

魚はいる。
キャスティングが俄然面白くなった。

同じポイントに投げ入れ、ルアーを引く。
3度目くらいに、はっきりとした当たりがあった。
竿を立て、リールを巻く。
シーバスだった。
竿がしなり、引きこまれそうになる。
その重さはどの位のサイズなのか、判断する情報は頭になかった。
だが、ルアーをなくした時の根掛りとそう変わらないほどの抵抗感があった。

慎重にやろうと自分にいいきかせながらリールを巻く。
まだ暗くて、魚がどのくらい近くまで引き寄せられているかわからない。
岸近くまで寄せたと思った途端、そいつは水中へ潜っていった。
糸が持って行かれる。
どうすればいいのだ?
竿を立てたまま、持って行かれた糸を巻いて引き戻す。

水面近くに魚が上がってきた。
シーバスだ。
小さくはなかった。
もう少しで取り込めると思った瞬間、奴は思い切り跳ねて身をよじった。
エラ洗いだった。
ルアーが外れ、しなっていた竿が元に戻った。
「ああっ…!」
と声を出してしまった。

夜が明けてきた。
その後小一時間ほどキャスティングを繰り返すが、当たりはまったく来なかった。

逃したけれど、魚がいるということはわかった。
いったんかかってしまうと、自分がどれだけ未熟なのかがわかった。
色々わかったということを土産にして、竿を納めた。