突っ込み

仕事中、PCにチェーンをつけないかと勧められる。
「はあ、でも僕、袖机に入れてカギかける習慣ついてるんで」
「チェーンつければPCのふたとじるだけでいいから楽だぞ」
「でも、別に袖机にしまうのが面倒というわけでもないし」
「いいの? ホントにいいの?」
好意で言ってくれたのだろう。
ありがたかった。
それよりも、かたくなにチェーン装着を断る自分の考えがどこからくるのかに興味がある。
保守性の表れか?

昼、茹で太郎でコロッケうどん食べる。
コロッケうどんを美味しいと思う感覚は、自分だけのもので、他人には説明ができないと思う。
説明して、変わった人扱いされるのも腹が立つ。
おれを変人扱いすることでその場のトークが盛り上がると無意識に考えての変人扱い発言にはさらに腹が立つ。

「コロッケうどんのコロッケを、箸でほぐして、つゆに浸してほぐれかかったのと一緒に麺をすすると、ああ幸せだなって思うんだ」
「そんなの美味しいと思うのあんただけだよ」
みたいな。

その突っ込みのせいで「ぼけた俺」と「突っ込んだ誰か」という寒い場面に自分が組み込まれてしまうことが好きではない。
だから、色々なことを思いついても、黙っていることが多くなる。

萩本欽一さんによると、誰が見てもボケとわかることを突っ込んだとしても、
「そういうのは突っ込みと言わない」
らしい。
坂上二郎さんはどんなコントでも、最初はむしろ、普通の人よりちゃんとこなしていた。
そこに、萩本さんの創意工夫に富んだ突っ込みが入る。
必死に突っ込みに応えていく課程で、二郎さんの秩序が崩壊していき、素晴らしいボケになる。

『欽ちゃんのどこまでやるの』に二郎さんがゲスト出演した時のコントをDVDで見たことがある。
その時の欽ちゃんの目は、背筋が凍り付くほど恐ろしかった。
二郎さんの一挙手一投足を逃すまいとする目だった。
あんな目を前にしてぼけられる芸人はそうそういないだろうな。

夕方、鍋横で稽古。
歌の練習をする。

共演者の中野さんから、シーンの録音をさせてくれと言われる。
空きスペースで兒丸さんと三人で録音する。
「こういうところだと出来るんだよ。でも、稽古で演出の前に出ると出来なくなっちゃうんだよ」
「わかってるんだ。俺だって人生生きてきてるんだから。でも、わかってるんだけど、できないんだよ」
などなど、悩み事など聞く。
いくつになっても、役者の悩みというのは変わらないのだと思う。

10時半帰宅。