普通の会話

朝、いつものようにデスクでお握りを食べる。
隣の席に新しく入った同僚がいた。
きょろきょろしていたので声をかける。
今日は一日中研修とのこと。

午前中、古いDBの作業をいくつかする。
忙しさの峠は先月で越えたが、散々苦労して作ったシステムが実は「その場つなぎ」のもので、また新しい仕組みを作らないといけないのだろうという予感を、スケジュールからうっすらと感じている。
手の平を火傷だらけにしておにぎりを200個握って持っていったら、その直後に特上寿司が30人前届くみたいな展開。
火傷はいいよ。
でもおにぎりはどうしてくれるんだ、みたいな感情。

だけど、そういうのも人生。
淡々と午前中の仕事を終える。

昼の休憩時、何を食べようか全く決めずにぶらぶら歩いていたら、広島風お好み焼きの店があったので入ってみた。
豚玉うどんを頼む。
「そば」の方が好きなのだが、「蕎麦」を連想してしまい、いつもうどんを頼んでしまう。
蕎麦アレルギーなのだ。

ボリュームがあり美味かった。

休憩室に戻り『海辺のカフカ』を読んでいたら、データベース利用者から電話。
「請求関連の情報をどのようにインポートしていますか?」
と聞かれたので、
「あれは、自分が手作業で書式を整えてから、IDと関連づけて入れてるんです」
「といいますと?」
「つまりですね…」
ひとしきり、登録の煩雑さや大変さを説明したところ、
「そうですか、我々に手伝えることはなさそうですねえ、大変ですねえ。頑張って下さい」
と言われ、電話を切られた。
休憩時間の15分がそれに費やされてしまった。

午後、新しいDBのフォーム改修をするが、自分がやっても、どの項目が一番入力頻度が高いのかなど、ユーザー視点のことがわからず、途中であきらめた。
結局、作業待ちになり、いつもの夕方のルーティンワークへ。

今朝隣にいた新人君は、顔を紅潮させながら、メールの設定などをしていた。
「前、何の仕事していたの?」
「建築関係です」
「CADとか使ったり?」
「いえ、現場で運転を」
変わり種らしい。話すのが楽しみだ。

6時に仕事を終える。
若い同僚と途中まで一緒に歩き、最近の忙しさについての話を色々聞く。

中野で中央線に乗り換え、国分寺へ。
改札前で綾香と待ち合わせる。
色々話したかったのだ。

「どこで話す?」
「あひるのたまごじゃないんですか?」
「あそこねえ。俺が学生の頃からあるんだよ」
「へえ」
「ゼミの新歓コンパで使ったことがある」

話しながら南口を出る時に、
「ピーナッツハウスってまだあるの?」
と聞いてみた。
「ありますよ」
「どうせなら、懐かしついでに、そこ行かないか?」
「いいですよ」

急きょ、ピーナッツハウスで飲むことになった。

飲むと言っても、2杯ほどだけで、会話が中心。
始めに、主用件について話し、その後はつもる話を色々する。
彼女がまだ学生の頃からの付き合いだが、そうやってさしで話ながら飲むのは、実は初めてだった。
確かに自分は、大学サークルの流れでは、かなり先輩だけども、先輩後輩丸出しの話より、大人同士の普通の会話をする方が数段楽しい。
興味深い話、色々聞き、驚いたりうなずいたり、時々衝撃を受けたり、ため息をついたりする。

帰り道、三鷹まで一緒。
話の続きを聞く。

余韻に浸りながら荻窪へ。
いつも通り白山神社に一礼して帰宅。
シャワーを浴びる直前に綾香からメール。
半裸で返信した。