捨てようという気持ちが突然やってきた

2008年の5月から6月にかけて、前の仕事から今の仕事への移行期があった。
前の仕事は契約更新を自ら断った。
事務仕事をやるにしても、マクロを使った仕事やACCESSを使った仕事をやりたいと思っていた。
6月にとんとん拍子で決まったのだが、それまでのおよそ一ヶ月は、基本的に仕事の面接とスキルアップの勉強以外は、自由時間に満ちた毎日を送っていた。
芝居の稽古にも通っていた。

その期間に、住んでいた部屋の間取りを変えようと考え、夏にかけて色々捨てたり買ったりした。
15年間使っていた机を捨て、その部屋に合った机に変えたり。
いまも使っているプラスチックのチェストを二つ買ったり。

収納スペースを増やしたからといって部屋が整理整頓されるわけではないことは、一人暮らしの歴史で十分承知している。
それでも整理整頓といういわば「天竺」に向かう旅を辞めるわけにはいかないのだ。
一人暮らしをする限りは。

今回長い机を捨てようと思ったきっかけは、横幅150センチのおかげでデッドスペースを上下にたくさん作ってるなあと思ったから。
それに、買ってから年月が経ち、机の天板がしなってきつつあった。

粗大ゴミセンターに連絡し、チケットを購入し、本日机を捨てることができた。
シールを貼ってから、
「さようなら」
と机に挨拶をした。

去年、長いこと使っていたコーヒー用の黄色いケトルを捨てた。
ゴミ収集所に置いて去ろうとした時、ケトルの口から、
「さようなら」
という声が聞こえた。
幻聴だろうと思う。
その黄色いケトルでどれだけたくさんのコーヒーを入れてきたか。
コーヒーと一緒にどれだけたくさんのスイーツを食べてきたか。
様々な思い出があふれ出でて、頭がおかしくなりそうだった。
耳をふさいで家に帰った。

長机は2008年から使ってきて、ほとんどパソコンデスク状態だったのだが、やはり思い出はたくさんある。
忌野清志郎が死んだニュースをネットで知ったのはその机だったな、とか。

物についての思い出を語り出したらきりがない。
色々なものを捨てるべき時が来たんだと思う。
断捨離という言葉もある。

机よりも先にこっちから「さようなら」と言ってあげた。
返事は聞こえなかった。
机は、もちろんまだ使えるが、しなった天板を見ると、疲れ切っているようにも見えた。
「なんて言っていいかわかんねえけど、ほんとにありがとな」
「…」
机はなにも答えなかった。

本棚のそばに置いていあったパソコンデスクを、長机の場所に移動した。
幅が半分以下になったけど、プリンタの置き場がなくなった。
「ドッペル椅子」をみっつ並べて臨時の置き場にした。
2006年末に上演した「ドッペルゲンガーの森」で使用した椅子のことだ。
美術の松本さん製作。
いまだに、家具として使っている。
前は、金魚の水槽置き場として使われていた。

今の生活で、本当に必要な物は、寝る場所と、パソコンのキーボードを打つ場所と、食事をする場所と、ヨガマットを敷けるスペースだ。
それだけなら、今よりも狭い部屋で暮らしてもいい。
家賃も安くなるし、物を手に取るのが簡単になりそうだ。

今の部屋に引っ越したのは2009年の8月末だった。
自分一人だけの理由ではないけど、あちこちの不動産屋に毎日コツコツ通って見つけた物件で、良かったと思っている。
住んでいる期間中にトイレや風呂も修理してくれた。
家賃も、お陰様で滞納することなく暮らしている。

でもいつかは出て行くだろうと思っていた。
去年は正直いうと惰性で住んでいたところがある。
芝居作りの基地として。

更新があったのは去年なのだが、今年はもしかすると引っ越すかもしれない。
引っ越したいのか? そういうわけじゃないけれど、そういう流れが生じたら、素直に従って、そうするかもしれない。

たぶん、長机を捨てたのは、何かの始まりなんだろう。
どう終わるのか。
見当もつかないけど、それよりも芝居だな。
短編、明日には全編完成出来そうだ。

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