方舟さくら丸を手に取る偶然

ファスティング三日目。
自転車を漕ぐ時、エネルギーの枯渇をはっきりと感じるようになった。
代わりに汗が出なくなってきた。
これは助かる。

細田くんから修正データをもらい、午前中に入稿を済ませた。

ファスティングにも、水だけしか飲まないもの、酵母飲料や野菜ジュースのみ口にしていいものと、色々やり方がある。
過去の経験からいうと、水だけで過ごすというやり方は体への負担が大きく、達成感という見返り以外のメリットは少ないような気がする。
塩分を摂取せずに水分だけを補給し続けると、ひどい倦怠感を覚えたり、頭痛やめまいを感じたりする。
野菜ジュースを飲むファスティングは、ジュースが空腹感の呼び水になることがあり、そうなると結構辛い。
いずれの方法をとるにせよ、宗教がからないようにするのが、一番気をつけている点だ。

定時に仕事を終え、自転車をかなりゆっくり漕いで帰る。
昨日と同じく、大根のスープを飲む。

明日の朝食べるためのお粥を仕込んだ。

安部公房『方舟さくら丸』を日曜から読んでいる。
読む本がなくなって、本棚にあったのを手に取ったのだが、読み返すのはたぶん二十年ぶりくらいだ。
こんな文が目に飛び込んできた。
「ドアをあけたとたん、一万匹の虻のうなり」

マグの旗揚げ公演「虻一万匹」は、当初「一万匹の虻」というタイトルだった。
書いている途中、出演者と雑談している時に、
「虻一万匹の方が、不思議な響きがしていいよね」
と思いつき、その場で変えたのだ。
だがきっと、元の言葉は、『方舟さくら丸』から無意識に持ってきたに違いない。
そのことに今までまったく気づかなかったことと、6月のマグ不足でまさに「虻一万匹」を短編にして再演するという偶然。
シンクロニシティと言わずして、何と言おう?