ゴンドラ妄想

6時起き。朝飯に昨夜と同じものを食べる。

7時20分に家を出る。地下鉄で荻窪。三鷹まで快速。中央特快で高尾。そこから各駅で甲府へ。
高尾からの電車は窓から吹き込む空気が大変冷たかった。

10時20分過ぎ甲府着。寒さは予想していたほどではなかった。しばし南口を歩き、11時に『楽』へ。ここは8年前に来たことがあるパスタ屋で、今では市内で一番人気らしい。

うにとイカと明太子のパスタを食べ、甲州ワインを飲んだ。パスタソースが濃厚で美味しかった。厨房でチーズを削っていたバイトの女子大生さんがとてもかわいかった。

11時40分過ぎのバスで昇仙峡へ。冬季は昇仙峡口までしか行かないらしかった。

目的地を仙娥滝に定めた。渓流を見下ろす道を歩いていると、なんとか石となどど名付けられた岩の数々が見られたが「ものは言いよう」だなあと思った。

昇仙峡は高校一年の時に遠足で来たことがある。バスで3時間以上かかり、帰りもそのくらいかかったので、いた時間はそれほど長くなかったはずだ。えらく疲れた思い出しかない。だから久しぶりに来たという気はまったくしなかった。

途中、土産物屋の主人に『コーヒー飲んでかない?」と声をかけられた。「あとでね」と返事をした。

写真を撮りながら歩いて、一時間ほどかけて仙娥の滝に着いた。ここ数日寒かったので凍っていないものかと期待していたが、一部しか凍っていなかった。でもここ数日のような寒さが続けばそのうち凍るんじゃないか。

少し先にロープウェー乗り場があった。せっかくここまで歩いて来たので乗っていくことにした。そして、ロープウェーに乗るのは生まれて初めてだということに気がついた。

ロープウェーはゴンドラにガイドさんが乗り込んで地理的な説明をしてくれた。構造上真ん中あたりでゴンドラ同士がすれ違う。「みなさま、よろしければ手を振ってください」とガイドさんはアナウンスした。

そこでなぜかおれは、自分が星飛雄馬になり、笑顔で手を振る花形や不器用ながらも両手を振る左門を横目で見つつ、「今のおれには、意味もなくこの左腕を振るなことはできない…! だが、花形はともかく、左門まで振っている! くそう、おれは野球ロボットなんかじゃない!」とメラメラと燃えだす妄想にとりつかれ、結局手を振ることができなかった。星くん。君、おれの妄想に登場したのは初めてのくせに、ずいぶん余計なことしてくれたもんだね。

頂上に着くとさすがに寒かった。展望台への道には手すりがなく、落っこちたら花崗岩のギザギザに削られてハンバーグの種になりそうだった。

富士山がよく見えた。頂上付近の冠雪はあまり見られなかっだ。寒いが、雪は降っていないのだろう。

ロビーのカップル向けソファに『蒼天航路』の董卓のように堂々と座って休憩した。時刻は2時半だった。帰りのバスの時刻表を調べると、4時10分過ぎに甲府行きが出るようだった。歩いて戻ることを考えるとあまり時間がなかった。

40分のロープウェーに乗った。ガイドさんは上りのときと同じようなアナウンスをした。またゴンドラとすれ違った。「よーしそこまでだ。全員手を上げろ」ゴンドラが止まり、向かいのゴンドラからテロリストたちがこちらへ乗り込んできた。そこへヘリコプターの音。「ルーパーン!」「あらららら、とーっつぁん、こーんなところまで」テロリストたちが変装を解くと、ルパン・次元・五右エ門だ。「おいルパン、ロープウェージャックなんかしてどうするつもりだ。水晶がねえなら、さっさとこんなとこずらかろうぜ」と次元が言う。「にっひひひひ、お宝の水晶はこーのかわい子ちゃんがちゃーんと持ってくれちゃってるんだもんね」と、ルパンはロープウェーのガイドさんを指差す。いつの間にかアニメ風になったガイドさんが「何を言ってるんですか!」としらばっくれると、五右エ門の目がキラリ。斬鉄剣! ガイドさん変装と制服は切り刻まれ、ヨーロッパの地図でいえばルクセンブルクくらいの面積しかない下着姿の不二子が登場。「どうしてわかっちゃったの?」と増山江威子さんの声。そして不二子の胸には水晶のペンダントが光っている。

昇仙峡のあたりは水晶の産地らしい。どの土産物店にも水晶が売られていた。ロープウェイ乗り場そばの店で眺めていると店の人が声をかけてきた。「これ、全部ここのですか?」と聞くと、輸入品とのこと。「でもね、研磨技術はうちのなんです」「なるほど」輸入した石をここいらの技術で磨いているのだった。

水晶、ローズクオーツ、アメジスト、虎目石を買った。形が整っていない、石ころふうの安いやつ。でもきれいだった。素朴でいい。

下りへの道を歩く。道は谷川に沿っているため、太陽が山の影になり、登る時よりだいぶ寒くなっていた。

途中、行きに声をかけてきた土産物屋の主人と会った。「どこまで行ってきたの?」と聞かれたので、ロープウェーまでと答えると驚いた風だった。これも縁だし、行きに約束もしたので、立ち寄ってなにか飲むことにした。奥さんがメニューを持ってきてくれた。甘酒があったので頼んだ。砂糖が入っておらず、奥さんによると、添えた生姜を入れると甘くなるとのことだった。やってみると本当に甘くなった。驚いた。これが甘酒本来の味なのだなと思った。

主人に挨拶し再び道を下った。バス停からロープウェーまで片道4キロほどだから、走る距離としても、また峠走としても大したことはない。しかし歩くと結構な距離感がある。そのため、下りは走る一歩手前の速度で、筋肉の使い方を走る時と同じようにして歩いた。

バス停には4時に着いた。タクシーの運転手が近寄ってきて「これからどこへ行くんですか?」と聞いた。「それは私の人生についての問いですか?」とはもちろん答えず「甲府方面。バス使用」とアレクサ以上の素っ気なさで答えた。しかし、愛想がなさすぎるなあと思ったので、少し運転手と雑談した。上の方に観光客はほとんどいなかったこと。歩いている人は車で上まで登っていたんじゃないかということ。ロープウェーのガイドさんが峰不二子だったこと。ルパンの声を山田康雄がやっており嬉しかったこと。

峰不二子あたりで運転手は「んん?」という顔をしていたが、客待ちをしてもあまり期待できないことはわかったらしく、礼を言って車に戻っていった。

やがてバスが来た。それに乗った。停留所をノンストップで走った。湯村温泉郷の近くで下りた。昇仙峡から30分とかからなかった。4時半過ぎだった。

マクドナルドに入り、ハンバーガーとコーヒーを頼んだ。ハンバーガーは別に食べなくても良かったのだが、結構歩いた後だったので、おやつ代わりにした。

小一時間マックでブログ更新をした。するとスマホの電池残量が残り15%を切り、節電モードに入った。5時15分だった。店を出て道を甲府方面に歩いた。

ファミマに入り、着替えのアンダーウェアとソックスとワインとチーズを買った。

5時半過ぎ、とんかつ屋『美咲小家」へ。ここは2012年に来た時、年末だったため休業しており入れなかった店だ。

クリームコロッケ、エビフライ、とんかつのセットを頼んだ。他にいた客は、馴染みらしき男と、どこかで仕事をしてきたらしい男女六人のチームだった。そのチームの会話を聞くと、CMがどうとか言っていた。一人だけ堅気っぽくない喋り方の女性がいたので、彼女がCMタレントで、他は撮影クルーなのかなあと思った。

ミックスフライのセットがやってきた。すり鉢でごまをすりソースを入れ、まずとんかつをつけて食べてみた。驚いた。肉がものすごく柔らかかった。こんなことならミックスではなくただのロースカツを頼めばよかったと思ったが、エビフライ、クリームコロッケ、大変美味しゅうございました。又、デザートのパイン美味しゅうございました。

店を出ると6時20分だった。そのまま歩いてすぐのところにあるホテルにチェックインする。

部屋に入り、いつ温泉に入るかぼんやり考えながらベッドに横になるとウトウトとしてしまい、7時40分まで寝入ってしまった。起きて大浴場へ。初めに体を洗おうとしたが、窓をすこし開けているため風が吹き込んで大変寒かったので、軽く体を洗い流してからすぐに温泉に入った。ストローを紙袋から出したあと、縮んだ紙袋に水をちょっと垂らすと紙が身をくねらしながら伸びるが、自分の体があんな感じに伸びているような気がした。

温まってから体を洗うためいったん上がり、洗ってから露天風呂に移動した。外は大変寒く、湯に浸かるまでの間は三十秒となかったのに凍えそうな心地になった。しかし湯に浸かると、体は温かいのに頭はよく冷やされているという状態がまことに快かった。これなら長く浸かっていてものぼせないかもしれないなあと思った。

温泉から出て着替え、マッサージチェアで全身をもみほぐしてから部屋に戻った。

ワインを飲み、つまみのチーズを食べた。部屋は最上階だった。街頭や住宅地の明かりが遠くに光って見えた。密度がそれほどでもないのがかえって眺めにはよく、星空に類似してた。

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