マヨネーズかけられねえじゃん!

5時起き。外は雨。

朝飯に、ご飯、なすのぬか漬け、プルコギ用牛肉。

電車で現場へ。

『存在と時間』1巻読み始める。先日買った、光文社の古典新訳文庫。1巻は序論。原註と訳者註が沢山あるのを読み飛ばさず、いちセンテンスごとに「はあはあ」息を喘がせながら読み進む。この読み方、宗教の経典を読む読み方に似てないか? こうでもしなきゃわからない難解さは、難解さゆえに帰依者を生んでいないか?

午前中、新ツール作成のためにエクセルで関数をまとめる。地道な作業。

Perfumeのライブチケットに当選した。来月15日。ぴあアリーナ横浜。
Perfumeのライブに行くのは2018年の12月以来だからおよそ2年8ヶ月ぶり。
2018年12月に行った時は2016年6月以来だったのでおよそ2年半ぶりだった。つまり2016年からの5年間で、ライブに2回しか行けていないということになる。
2016年までは何だかんだで必ず毎年ライブに行っていた。2017年はチケットを取ったものの自分の稽古日程と被っているのを失念し諦めた。2020年は当日会場まで行ったのに直前で公演中止になった。その2回に行けていれば5年で4回になるから、まあ悪くない。ライブに行く回数が減ったことを、アーチストの変貌に結びつけて考えられるかと思ってみたが、全然関係なさそうだ。運だ、運。

昼前、チケット代をセブンイレブンで払い、その帰りに弁当を買った。唐揚げ弁当。ご飯と唐揚げだけ、という感じの、潔い組み合わせだった。昼にそれを食べた。蓋にカロリーが書いてあり、1000キロカロリー以上あった。
(げげっ!)と思った。
(これじゃマヨネーズかけられねえじゃん!)と思った。

午後、矢玉さんがやってきて、新ツールはいつ頃完成するか聞いてきた。
「いつまでに、っていう希望はありますか?」
「来週まで」

(げげっ!)と思った。
(これじゃマヨネーズかけられねえじゃん!)と思った。

「難しいですか?」と矢玉さんが言った。
「え? ええと、そうですね、むつ、むつか、つか、つかし、かしいです」
期限を提示された時、「いいでしょう!」と答え、それより早く仕上げることに意外とこだわっていたので、「難しいです」というセリフをすらすら言うのにとても抵抗があった。
矢玉さんは微笑を浮かべていた。片頬笑いだったかもしれない。それでちょっと、裏声気味に(チクショー!)と心の中で思い、(コウメ太夫?)と思い、それから時間稼ぎのために今日やってきた作業を説明した。

「…つまりですね、実際に使うオペレーターがどんな項目をどんな並びに表示して欲しいのか、それに悩んでいたわけなのです」

矢玉氏は指をパチンと鳴らして、
「それなら、この間私と一緒に来た大田区くんが詳しいから彼に聞きましょう。おーい、大田区くん」
フロア中にいる大田区在住または出身の20人くらいの人が全員動きを止めてこちらを見た。そのうち、先日矢玉さんと一緒に来た大田区くんが人差し指の先っぽを自分に向けて(ボクすか?)ジェスチャーをしていた。矢玉さんはうなずきを返し、ボクすかくんがやってきた。
「あとは、その辺のことは彼に聞いてください」
そう言って矢玉さんは去っていった。

ぽつんと残されたボクすか君と項目整理のことを話す。話しているうちに内容の整理が自然とできてきて、こりゃ、来週中にいけるかもしんねえぞ、という気持ちになってきた。
話を聞くと、ボクすか君は実際にツールを使うチームにいるわけではなく、項目以外のことについては詳しくなかった。それでも、過去色々なツールを作ってきた経験から、たぶんこうだろうなあという現場の感じは想像できた。水曜までにテストができる態勢まで作り、金曜にリリースする。もしそれができたら、今年は「勝ち」にしよう。

夕方、雨はやんでいたが、雨雲レーダーを見るとたまたま今の時間だけ雨雲のお目こぼしを得ているだけのようだった。自転車は駐輪場に置きっぱなしだったが、電車で帰る。

新中野で降り、髪を切りに行く。新人の女の子が助手っぽい感じでアヴェさんのそばにいた。

例によってアヴェさんと与太話をだらだら喋る。

『鬼滅の刃』の話になった。
「俺、7巻くらいで挫折したんだよね。メインキャラが揃って、最初のうちはよかったんだけど、胡蝶しのぶが出てきて、あ、これは俺、読まなくていいな、と思っちゃった」
「ええっ?」アヴェさんは驚いた。「いいキャラじゃないですか。かわいいし」
「いや、いいキャラで人気があって、ますます面白くなったと感じる人がいて、全然いいの。でもおじさんは、逆に冷めちゃったの。ああ、こういう感じでいくのね、と思っちゃったの」
「…」アヴェさんは不満そうである。
「いやいや、だから、面白いんでしょうし、ヤングらが面白がってるのをいいことだと思うの。でも俺にはもう無理なのよ。いや、もうっていうか、若い時でも無理なのよ。それは仕方ないの。世代的棲み分けっていうかさ。無理して読み進めて若者に迎合する痛いオヤジになるのが目に見えてたから。もちろん、わしら世代でも好きな人はいるけど、俺にとって引き返すポイントがその辺だったということなのさ」

それでもアヴェ氏は、最終刊までは読んでくださいと言った。俺の感じたもやもやがきっと晴れると言いたげであったので、夏休みの課題図書にすることを了承した。

『進撃の巨人』の話にもなった。前半の面白さはすごかったというところで意見は一致した。
「あの頃って、謎がまだ解明されていない面白さがありましたよね」
「壁の外の暗闇とかホントに怖かったしね。奇行種とか、なんなんだあの走り方は? って、アニメ見て思ったし」
「いましたね奇行種」
「マラソンで35キロ地点あたりを走っている時の俺だよあれは」

8時にサロンを出る。雨脚が強くなっていた。

いなげやで買い物をし、惣菜パンといなり寿司を買って帰宅。夕食にそれらを食べ、クーラーつけ、ベッドに横になったら、そのまま寝てしまった。